「早く、起きなさいッ」

高い女の人の怒声でボーとしていた頭がさえてくる。

「はーい」

また、いつもの日常が始まってしまう。

物置部屋と言っても違和感を覚えない部屋の隅にある鏡を見る。

そこには、髪が伸びきっていて目の下には濃い隈がある十四歳ぐらいの私がいる。

十四歳ぐらいに見える容姿。これでも、十六歳なのだ。

だから、私はそろそろ金持ちの年上に嫁がされて家の道具になってしまうんだろう。

重い体を動かして和室のふすまに手をかけてゆっくり右に動かす。

「・・・おはようございます」

「遅い!」

和室に入った瞬間、お茶を投げられる。

「お前は、早く起きて使用人としてでも役に立たないのか!?」

どうして、ここまで違うのだろう。姉の私と妹の千尋(ちひろ)とでは。

「お父様~、新しい服買ってよ~」

「ああ、いいぞ。買い物に行こか」

「ふふっ、本当に仲がよろしいことで」

別に、千尋と親が違うわけでもなんでもない。

ただ、普通の人間と異なるから。

「その前に、仕事を終わらせていこうか」

クソジジイ(・・・・・)が、私の方を見てニヤッと笑う。