「はい。何ですか?」

「今までありがとうございました」

私は、恵里さんに最大級の感謝の笑顔を向ける。

「笑えるようになったのですか?」

「どうだろうね」

分からない。でも、恵里さんには感謝してるんだ。

本当に誰も信用できなかったころ、恵里さんのおかげで少しは楽になれたから。

「では、行ってきます」

「いってらっしゃいませ。お嬢様」

恵里さんにもう一度頭を下げて、悠華さんがいる部屋に行く。

「用意が終わりました」

私は、切り替えて偽物の笑顔を張り付ける。

「では、行きましょうか」

悠華さんは、そう言って私の手を掴み、手を絡ませる。

「ちょっ」

「夫婦になるんですから、騒がないでください」

私は平然と言い切る悠華さんをにらむ。