えっ?

今のは幻聴だよね?

本当だったらありえないんだけど。

「えっとどういうことですか?」

「だから、僕がもらうのはこちらのお嬢さんです」

そう言って鬼頭家のご当主様にニッコリ微笑まれる。

今、それしたら私が困るってわかっていてやってるよね。

絶対に面白がっていやってるよ。性格、悪すぎない?

「は?こいつより千尋の方が絶対にいいのに?」

千尋が涙目でウルウルしながら鬼頭家のご当主を見上げる。

「そうですよ。こいつは可愛げないんですよ?」

「僕の妻となる方の悪口を言わないでください」

鬼頭家のご当主が低い声で言う。でも、顔は笑顔なんだけど。

「そういえば、名前を聞いてませんでしたね?」

「気になるなら名前は名乗るのが先ですよ?」

私は嫌味をたっぷり込めて言い放つ。