マッサージ店に行くと、かなりの行列で。俺にマッサージなど不要だけど、マッサージ師がどんなマッサージをしているのか気になり、邪魔はしないからと、外から様子を見させてもらう事に。
そのお店には何人かマッサージ師がいて、待っている患者さんに聞いた所、幸せそうな人達をマッサージしたのは、1番歳をとっているお爺さんだと教えてもらった。
勿論他の人にマッサージをしてもらった人達も、ニコニコで帰って行ったけど。そのお爺さんにマッサージされた人達は、比べられない嫌い本当に幸せそうに帰っていって。
ようやくお店が終わったのは、夜11時を過ぎてからだった。
「すまんのう、待たせてしまって。今日はいつもよりも人数が多くての。いつもならば1時間くらい早く終わるんじゃが」
勝手に待たせてもらっていた俺に、お茶を入れてくれようとしたお爺さん。1時間早くって、それでも夜10時だ。
毎回こんな遅くまで働いているのか。今日は話しを聞くのをやめて、たとえばお爺さんがお休みの日にでも、改めて話しをさせてもらう約束ができれば。そう話そうとした時。
「今日の営業は終わりましたか?」
「おう、爺さん、お疲れ様!!」
「彼があなたに興味を持っていると連絡が入りまして。どうせなら共に話しをさせてもらおうと思いまして」
「いつ声をかけようか、相談してたんだよ」
2人組の男がお店に入って来て、俺の事を見ながらお爺さんにそう話し。
「そうじゃろうな。お主、ちとこれから、少しわしらと話しをしないかのう」
こうしてよく分からないまま始まった、お爺さんと2人の男達との話し合い。最初はもちろん自己紹介からしたんだけど。まさか始めの自己紹介の時点で驚くことが起きるとは。
まずマッサージ師のお爺さんだけど。俺のような末端の最弱のスケルトンでも知っているような、大賢者ウェンセスラスだった。大賢者、いやいや大大大賢者か。
この世界で魔王と勇者の次に力を持っていると言われている程の人が、まさかマッサージ師をしていたなんて。
国に支えていたはずの彼がなぜここに? 驚きのあまり声が出せないでいる俺。でも驚きはまだ続いた。
2人の男のうちの1人、丁寧な口調の男は魔王アマディアスで、ちょっと、いや普通に口が悪い方の男が、勇者ジェラルドだと言ったんだ。俺はそれを聞いて、さらに固まることに。
いや、もちろんこの街を作ったのは、魔王と勇者だと言うことは理解していたよ。それにこんなに素晴らしい街を作るなんて、凄い2人だなって。
でもさまさかその代表の2人が、目の前に現れるなんて、そんなこと普通思わないだろう? だってこの街の代表だぞ。魔王と勇者だぞ。
俺の前に座ってニコニコしている魔王、勇者、大賢者。何でこんなことになったんだ? 少しして固まって体は動いたけど、今度はアワアワすることに。そんな俺に、今度はニコニコではなくニヤッと笑いかけてきた魔王。それにまた固まる俺。
そんな固まったり、アワアワしていた俺だけど。その後の3人のまさかの話しを聞くうちに、今度は緊張どころではなくなった。
どうも俺がこの街がある森へ来た時点で、魔王も勇者も大賢者も、俺の存在に目をつけていたらしく。何と街の入ってからは部下や仲間に、俺の監視をさせていたらしんだ。しかも自分が動ける時には、自ら監視をしていたと。
ほら、俺は争い巻き込まれて攻撃を受けた時から、その影響なのか魔法が使えるようになっただろう。それは魔法が使えないほど微弱だった魔力が、上がったからだろうと思っていた。
だけどどうもその魔力が、俺が考えていたよりもかなり、いや莫大に上がっていたらしく。
この森に入るには『真実の目』を持った人達の鑑定を受けて、敵意を持っていないと判断した人しか森に入れないんだけど。
ちなみに『真実の目』っていうのは、相手がどんな感情を能力を持っているか、鑑定できるもので。その真実の目を持っている人達を森の周りに配置。
その人達が『真実の目』を使って、問題がないと判断されると、森の中へ、街の中へ入ることができる。
それでその『真実の目』で鑑定された俺。あまりに俺の魔力が莫大だったせいで、もしかしたら真実の目が弾かれた可能性があり、もしも街を攻撃しに来たのならば……、と監視していたって。
でも俺の行動を見るうちに、そして俺の魔力を調べるうちに。俺の魔力からは敵対しているような、悪意のある? 刺々しい? 感じはせずに。それどころかまろやかな? 感じがしたと。
そして先日3人は集まり、俺のことを話し合い、敵対する者ではないという結露に。そして監視よりも、ここは1度俺に話しを聞いてみようということになったんだけど。
そうしたら、たまたま俺が大賢者ウェンセスラスのお店へ来たものだから。みんながここへ集まった、とういう事だった。
話し? 話って何を話すんだ? そう思っていた俺。するとまたあのニヤリ顔で魔王が。
「話しを聞こうとというか、私達はあなたをスカウトしに来たのですよ」
そう言ってきたんだ。