なんて素晴らしい家なんだ。精神は大人なままだけど、ワクワクが止まらない。こういうのに興味が湧くのは、転生して赤ん坊からやり直しで。精神が赤ん坊に引っ張られているからか? 

 でもこの家は、大人な俺から見ても、かなり楽しい家に変わりはないし。まぁ、別に子供の俺が遊ぶんだ。他の人達は違和感がないだろうから、楽しませてもらおう。
 俺さ、会社を辞めた後は、旅に出ようと思ってたって言っただろう? こういう自然を利用したアスレチックも体験してみたかったんだよ。

 なんて事を考えながら、1階のリビングに移動した俺達。1つ1つの部屋がかなり広いため、リビングのテーブルも大きく、かなりの人数が座れた。座れなかった人達は、どこからか椅子を持って来て座っっていた。

 って、今どこから椅子を取り出した? 何もない空間から、いきなり取り出さなかったか? 俺は思わず、それをやった人達の真似をして手を動かしてしまった。

「あら? どうしたの?」

「ばぁぶぅ!」

「******」

 すぐさま伝えてくれるスライム。

「ああ、急に物が現れたからビックリしたにね。今のは魔法よ。魔法の空間から荷物を出したの。透明な荷物入れね。なんて言っても分からないわよね。もう少し大きくなったら、色々な事が分かるようになるでしょうけど」

 ああ、今のは空間魔法みたいなものか? 魔法で空間を出して、その空間の中に荷物を入れる。この世界に空間魔法があるかは分からないけど。もしかかしたらエルフだけが使える魔法かもしれないし。

「さぁ、これからまだまだやる事がたくさんあるけれど、決める事もいっぱいよ。まずは1番大切な事。この子も名前を決めないといけないわ」

 !!!!!! そうだよ!! 俺の名前!! レイナさんの言葉に俺はハッ!! とした。今までずっと赤ん坊、赤ちゃんって言われていたし、自分でも赤ん坊って言っていたから。すっかり名前の事を忘れていた。いや忘れていたんじゃなくて、考えていなかった。

「確かにそうだったな。誰か何かあるか?」

 オーレリアスさんがみんなに聞く、だけどいきなり名前って言われてもな。みんなが困り顔をして黙ってしまった。レイナさんだけはニコニコしていて、どんな名前にしようかしらねぇ、と話しかけてくれているけど。

 ミルバーンは……。論外だった。あれは何も考えていない顔だ。少しは何かあるだろう。なんて思ったけれど。
 ミルバーンだって迷惑だよな。里の決まりだ何だと、急に赤ん坊の面倒を見ろって言われたんだから。しかも面倒を見るだけじゃなく、家族になれだなんて。

 これについては、いつか謝らないと。元々は神があんな場所に俺を転生させた事が問題だけど。でも俺のことで巻き込んだ事に変わりはないし。

 この関係が本当に続くのか、それは分からない。もしかしたらやっぱり無理だと、俺が生活できていないとみんなが納得すれば、ミルバーンじゃなくて、別のエルフが僕達の家族になる可能性だってある。

 だけどそれがない限り、俺達はこれから家族として暮らして行くんだから。いつかきちんと謝って、それから感謝を伝えよう。

「誰もないか?」

「誰もないのなら私から。ティニーなんてどうかしら? 以前、ここに突然現れた人間がいたでしょう? 来る場所を間違えたとか、別の世界へ行くはずだったのにとか、ここは地球とは本当に違う場所なんだな? なんて、よく分からない事を言っていた人よ」

 ん? 今レイナさん、なんて言った? 来る場所? 違う世界? 地球? それってまさか。

「ああ、数十年も前に、そのような人間が突然現れたな」

「私ね、そに人がここを去るまでに、少し話しをする時間があったのよ。その時に聞いたにだけれど。運命って言葉を、その人の国ではデスティニーって言うらしくて。私、それを聞いた時、なぜかとっても惹かれたの」

「デスティニー……」

「この子との出会いは私達にとっても、この子にとっても、精霊達にとっても、運命的な出会いでしょう? だからこの運命って言葉がピッタリだと思って。でもそのままだと固い感じがするから、最後に所を取って、ティニーなんてどうかと思ったの」

 絶対それ、地球の人間だ!! しかも英語と日本語が分かっている、日本人とは限らないけど、でもなんか日本人な気がする。

「確かに彼は、他にも色々な言葉を残していったが。うん、運命か、確かに私達にピッタリの言葉だな」

「なるほど、確かにあってはいるな。確かその者の名は大城晴翔と言ったか?」

「はい、そうです」

 おおっ!! やっぱり日本人だ!! 彼はどうしてこの世界の、この場所に現れたのか。その理由は分からないけれど、色々みんなに言葉を伝えておいてくれて助かった。デスティニーのティニー、良い名前だよ!!

「あぶう!! ばあぶう!!」

「あら、どうしたのかしら? 何か嬉しそうにしているけれど。もしかして……」

 すぐさまもふもふな蝶が伝えてくれる。

「そなのね、やっぱり気に入ったってことの声なのね。みなさん、この子も気に入っているようですし、ティニーでどうでしょうか?」

 皆頷き、ミルバーンは無視していたけど、俺の名前が決定した。俺は今日からティニーだ!!

「あぶうあ!!」

「ふふ、嬉しいわね。あなたの素敵な名前よ」

「さぁ、ティニーの名前が決まったのなら、次はこの子達の名前を考えてもらえないかしら? それともティニーがもう少し大きくなって、しっかりとお話しができるようになってから、相談して決める? 今でもあなた達は意思の疎通ができているみたいだけれど」

 今言ったのはアイラさんだ。蝶達とスライムに話している。

「本来あなた達に名はないけれど、これから家族として暮らすのなら、名前が必要でしょう? それに名をもらう事で、何か新し事ができるようになる可能性があるわ」

 そうだよな。名前は必要だよな。いつまでも透明な蝶、もふもふの蝶、スライムじゃ。