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本鈴が鳴って、始業式が行われた。
校長先生の講話が終わると、表彰式が始まる。
「サッカー部キャプテン、演壇の前に」
壇上に立った人物を見た瞬間、背筋が伸びる。
――間違いない。
あの人は、桜坂高校サッカー部のキャプテンの大地さん。
インターハイと全国大会それぞれ2連覇に導き、U-18にも選ばれた、桜坂高校が誇るエースだ。
大地さんは、俺とアオが通っていたサッカースクールの先輩でもある。
そんな大地さんといっしょに試合に出るのが、俺たちの目標のひとつだ。
「桜坂高等学校殿。全国大会優勝を祝して、ここに表彰します」
校長先生が大地さんに表彰状や優勝メダル、優勝トロフィーを渡す。
それらを受け取った大地さんが一礼すると、大きな拍手が送られた。
そのあと、別の表彰式が行われる。
「3年の桜庭なぎさん、演壇の前へ来てください」
……“桜庭なぎ”。
聞き覚えのある名前に、俺は再び演壇に目をやった。
――やっぱり、“あの”桜庭さんだ。
「全国絵画コンクール大賞、桜庭なぎさん」
校長先生が桜庭さんに賞状と金の盾を渡す。
拍手の中で、小さくお辞儀する桜庭さん。
でも、その表情はどこか曇っていて、喜んでいるようには見えなかった。
表彰されるほどの絵を描ける桜庭さんが、どうしてこんなにも苦しそうな顔をするのだろうか。
それをわかってあげられたら、力になりたいのに……。
今の俺にできることが何も見つからないという無力さがもどかしくて――ただただ悔しい気持ちでいっぱいだった。