これは完全にやらかした気がする。

 窓から差し込む眩しい光にゆっくり目を開くと、目の前に美しい少年がいて思わずがばっと身を起こした。
 寝癖のひどい髪にさらにぐちゃりと指を通す。完全に朝だ。どうやらわたしは酔い潰れて寝落ちてしまったらしい。
 記憶はある。アルコールに強くないくせに一気に大量に摂取して、頭痛と眩暈に気持ち悪さをプラスした最悪な酔い方をしてしまった。

 横を見ればすうすうと息を立てて眠る恋人の姿がある。
 こいつ、寝ててもこんなに綺麗な顔をしているのか。と若干嫌味なことを思いつつ、朝までわたしの横で様子を見ていてくれたことを想像して胸が痛んだ。せっかくの旅行だったのに本当に申し訳ないことをした気がする。
 というか完全に昨日が”タイミング”であったはずなのに、また逃した。
 別に恋人同士だから必ずしもしなくてはいけない行為だとは思っていない。けれどここまで手を出されないと不安にもなってくる。もしかしてこの麗しい男には欲というものがないのだろうか。(昨日は完全にわたしが悪いとはいえ)

「いや、考えても仕方ない、顔洗おう」

 独り言を呟いて立ち上がる。ご飯を食べる前に(もっと言えば酔って潰れる前に)お風呂に入っていてよかった。