◇
スミくんと別れて家に帰ると、ほどなくしてスマホが鳴った。珍しくシュンくんから「今から行ってもいいですか」とメッセージが入っていて、「OK」と簡素なクマのスタンプを送っておく。
いつもこんなメッセージを送ってこないで、突然やってくるくせに。しかもさっきスタバで会ったというのに、変な子。いつでも来ていいって言ってるのにね。
暫くして家にあがりこんできたシュンくんは、いつもより少しだけ表情が固かった。
「……ごめんなさい、さっき、嫌な態度取ったなって」
「え、シュンくんって謝れるんだ」
「どこに驚いてるんですか……」
「いや、ていうか全然わたし何も気にしてないけど……」
わたしの言葉に一瞬目を開いて、だけど変わらず無表情で。そのままわたしが座っているソファの横に腰を下ろした。これは最近の定位置だ。わたしが右側、シュンくんが左側。
「それならいいんですけど、」
「嫌な態度っていう自覚はあったのね」
「スミがいたし、気が緩んでたなって、家に帰ってからちょっと反省して」
驚いた。シュンくんっていつも堂々としていて、感情的になることが殆どない。反省とかするタイプなんだ。そんなに嫌な態度だったかな。まあ少し子供っぽいなとは思ったけれど、4つも年下に大人気を求めているわけではないし。
「全然わたしは気にしてないんだけどなー」
「……スミと何話しましたか?」
「そりゃ、シュンくんのことだよ」
「それはちょっと気になりますね」
「うーん、ていうか初対面だし、共通の話題といえばシュンくんのことしかない気がするけど」
その言葉に納得したのか、少し考えるそぶりをして。
「冬乃さんといると、自分のこと知らない人間みたいに思えるんですよね」
「なにそれ、どういう意味?」
「自分の知らない感情が湧くというか。まあ元々、自分について考えることってしてこなかったから、難しいんですけど」
「シュンくんって時々哲学的なこと言うよね」
「自分でもわからないことに気づいたと言うか。多分、ソクラテスみたいなことです」
なんなんだそれ。全然意味がわからない。
わたしが疑問符を浮かべても、シュンくん自体も自身の感情を理解できていないのか、それ以上話を広げることができなかった。
スミくんと別れて家に帰ると、ほどなくしてスマホが鳴った。珍しくシュンくんから「今から行ってもいいですか」とメッセージが入っていて、「OK」と簡素なクマのスタンプを送っておく。
いつもこんなメッセージを送ってこないで、突然やってくるくせに。しかもさっきスタバで会ったというのに、変な子。いつでも来ていいって言ってるのにね。
暫くして家にあがりこんできたシュンくんは、いつもより少しだけ表情が固かった。
「……ごめんなさい、さっき、嫌な態度取ったなって」
「え、シュンくんって謝れるんだ」
「どこに驚いてるんですか……」
「いや、ていうか全然わたし何も気にしてないけど……」
わたしの言葉に一瞬目を開いて、だけど変わらず無表情で。そのままわたしが座っているソファの横に腰を下ろした。これは最近の定位置だ。わたしが右側、シュンくんが左側。
「それならいいんですけど、」
「嫌な態度っていう自覚はあったのね」
「スミがいたし、気が緩んでたなって、家に帰ってからちょっと反省して」
驚いた。シュンくんっていつも堂々としていて、感情的になることが殆どない。反省とかするタイプなんだ。そんなに嫌な態度だったかな。まあ少し子供っぽいなとは思ったけれど、4つも年下に大人気を求めているわけではないし。
「全然わたしは気にしてないんだけどなー」
「……スミと何話しましたか?」
「そりゃ、シュンくんのことだよ」
「それはちょっと気になりますね」
「うーん、ていうか初対面だし、共通の話題といえばシュンくんのことしかない気がするけど」
その言葉に納得したのか、少し考えるそぶりをして。
「冬乃さんといると、自分のこと知らない人間みたいに思えるんですよね」
「なにそれ、どういう意味?」
「自分の知らない感情が湧くというか。まあ元々、自分について考えることってしてこなかったから、難しいんですけど」
「シュンくんって時々哲学的なこと言うよね」
「自分でもわからないことに気づいたと言うか。多分、ソクラテスみたいなことです」
なんなんだそれ。全然意味がわからない。
わたしが疑問符を浮かべても、シュンくん自体も自身の感情を理解できていないのか、それ以上話を広げることができなかった。



