早川シュンと名乗る美少年がうちに入り浸るようになってから早2週間─────
 雨の日だけでもいい、なんて抜かしたのはほんの1日だけで、バイトが遅くない日はほぼ毎日うちへやってくるようになってしまった。(それを許しているわたしもわたしでどうかと思うんだけれどね)
 この2週間でわかったこと。シュン美少年は見た目に反してかなり真面目な学生だった。『身分は明かさないと怖いと思うので』と、学生証とパスポートのコピーをわざわざ持ってきた時は流石に驚いたよね。律儀で真面目にも程がある。危なっかしいのはそっちの方だよ、と言いたくなるくらい。(わたしにストーカーだと言われたことをずっと根に持っているらしい)
 あとは、賢くて写真を撮ることと本を読むことが好き。本人が最初に言っていた無口だというのも強ち間違いではないようで、わたしの家に来ても大抵本を読むか卒論を書いている。
 嫌いな食べ物はピーマンと茄子。好物は今のところ不明。視力はいいくせにパソコンをいじる時だけブルーライトカットの伊達眼鏡をつけていて、その姿は少々グッとくる。なんせ顔がピカイチにいい。
 それから、やはり人付き合いは得意ではないようで、大学にもバイト先にも友達と呼べるような人は殆どいなさそうだ。本人はそれに対して何か気にしているわけでもなく、『人と話すのがめんどくさい』の一点張り。コミニケーション能力が低い要因もよくわかった。

「……なんですか、さっきから俺の顔じろじろ見て」
「え、そんなに見てた?」
「はい、視線が痛いのでやめてください」

 少し照れたように視線を逸らす姿を見て、不覚にも可愛いなとおもってしまった。ダメなんだって。
 平日夜。今日も今日とてうちに上がり込んできたシュン美少年にご飯を食べさせた。(食べさせたというのはカッコつけた、近頃料理はほぼシュンくんがやってくれている。仕事から帰ってきてあったかい料理が並んでいることに、どうやらわたしは味を占めてしまったらしい)その後ダイニングテーブルでパソコンに向かっていたので、向かいに座って食後の読書兼ティータイムをしていたのに、いつの間にか彼のことをまじまじと正面から見つめてしまっていたようだ。

「あはは、ごめんごめん。やっぱ綺麗な顔してるなーって」
「冬乃さんも負けてないですよ」
「美人に産んでくれた両親に大感謝」
「引くて数多でしょうね」
「その言葉そっくりそのまま返すけど」
「興味ないですから、恋愛とか」

 ああそう。じゃあきみが私に対して持っている感情は一体何に分類されているのだろう。