ラクダが目を閉じた。
 その頬を伝って、一粒二粒こぼれ落ちる。

「そうだね。わかった」

 そう聞こえた。
 それは、僕に向けた彼女の心の声だったのだろうか。
 
 が、それを確かめる術はもうなかった。

 彼女の言葉を聞き届けてヒロノが頷き、やがて風に吹かれるまま教室の外へ出ていったように、彼女は身支度をしてまもなくいなくなり、僕もまたそのまま溶けるように消えていったからである。




(了)