洋館と和風の屋敷が混在しているような内装の廊下を歩いていく。こんな豪華な旅館に一度くらい泊まってみたい。
 真之の寝息が聞こえだした辺りで、目の前に茶色い大きな扉が現れた。

「ご当主様、一之瀬桜子様をお連れ致しました」

 すると扉が勝手にぎい……。と音を鳴らしながら開いていった。これも裕一郎様のお力なのかな?

「よく来てくれたね、ふたりとも」
「お、遅くなって申し訳ありません……!」
「大丈夫。俺もさっきこっちに来たばっかりだから」

 裕一郎様は部屋の中にある茶色い洋風の椅子に腰かけている。紺色の着流しからは金色に輝く九尾がゆらゆらとそよ風のように揺れているのが見えた。
 真之のまだ小さくほんわりとした尻尾もいずれ成長したら、あのような長くてつややかな尻尾になるのかもしれない。

「じゃあ、ゆっくりここで話すとしようか。何か飲み物でもいる?」
「そうですね……では温かいお茶をください」
「わかった。では用意しよう」

 裕一郎様に促されて彼の反対方向の茶色い椅子に座る。真之は裕一郎様が指を振ると抱っこひもから彼の手元へと宙を浮かびながら移動した。
 そして机にはお茶がどこからともなく現れて、すとんと配置される。ちゃんと湯気が出ていて淹れたてなのが見ただけでわかった。

「す、すごい……」