まず不幸体質のヒロインの設定が魅力的でした。生まれながらに不幸を引き寄せる性質をもつ葉桜は、紫鶴宮家の繁栄のために巫女として利用されてしまう。悲しいことですが、その構図は世の中の摂理でもありますよね。
そして、強く心を掴まれたのは、紅葉が葉桜に放った「君らしく生きろ」という力強い台詞。君らしくなんて、現代ではありふれた言葉なのかもしれません。けれど、自身の幸せのために生きられない、あるいは生きる機会を奪われた彼女にとって、その言葉がどれほど重く響いたことか! 彼女に感情移入し、思わず涙腺が緩みました。
後半の戦闘シーンの描写も臨場感に溢れ、読んでいて終始ハラハラドキドキさせられ、最後には、新たな旅の始まりを予感させる、爽やかな読後感へと導かれました。すでに続きが読みたいです。この先、悲しい過去をもつヒロインが自身の幸せのために生きられるようになってほしいな、と願わずにはいられませんでした。