「うわぁ~」という叫び声にわたしと猫のタマにゃんは飛び上がるほど驚く。

  まあ、この叫び声が聞こえてくるのは毎度お馴染みのことではあるのだけど、わたしとタマにゃんは毎回驚いてしまう。

 「タマにゃんびっくりしたね」

 タマにゃんは白、茶色、黒の三色の毛色を併せ持った三毛猫だ。茶色の部分がオレンジ色ぽくて綺麗だなといつも思う。

  そんなタマにゃんはわたしを見上げにゃんと鳴いた。

 「タマにゃんってば返事をしてくれて可愛いんだから。ほんとあの子はうるさいよね~」

  わたしは愛くるしいタマにゃんの頭を優しく撫でる。

  すると、タマにゃんは心地よいのか目を細め幸せそうだ。うふふ、わたしの愛情が伝わっているようで嬉しい。

 「さて、行こう」

  わたしはタマにゃんにそう言うと、隣の部屋ヘ向かった。

 「ちょっと、梅奈(うめな)! うるさいよ」と文句を言いながら扉をバンと開けた。

  部屋の中を覗いたわたしは、まただと溜め息をつく。だって、白とピンクを基調とした柔らかくてガーリーな部屋の真ん中にふわふわな触り心地のピンクのラグカーペットがあるんだけど、そこに死体が横たわっているのだから。

  その死体をタマにゃんと一緒にじっと眺めていたその時。

 「ちょっと人の部屋に勝手に入って来ないでよ」と死体が喋った。

  顔や髪や服などにべったり血糊を付けた死体がガバッと体を起こしわたしをギロッと睨む。

 「だって、梅奈が喧しいんだもん。近所迷惑だよ」

  わたしは死体の梅奈をじーっと見て言った。

 「わたしは演技の練習をしているんだよ。奈子(なこ)こそ邪魔しないでくれるかな?」

 この動く死体は演技の練習中の梅奈だ。

  台本がピンクのラグカーペットの上に転がっている。ぬいぐるみも飾られとても可愛らしいがあふれているこのガーリー部屋に血糊だらけになっている梅奈。なんともシュールな光景だ。