彼らから視線を外すと結斗は溜め息を吐いた。

(……うるさい)

 結斗は頬杖をつくと眉間に皺を寄せた。

 入学初日はもっと静まりかえっているものだと思っていた。
 段々と雰囲気に慣れて、騒がしくなっていくものだと。
 姉達も初日はびっくりするくらい静かだよと言っていたし、他校に進学した友達も"びっくりするくらいシーンとしてた"と連絡が届いていた。

 ……それがどうだ。
 聞いてた話と全然違うではないか。
 そこらじゅうで会話が盛り上がり、教室内に声が響いてる。
 普通なら緊張して静まり返ってるものなのに。

 結斗はイヤホンで音楽を聴きたい衝動に駆られた。
 だが、残念ながら校内で携帯の使用は禁止されており、校則を破ると生徒指導を受ける羽目になる。
 通知音が鳴るのも駄目らしく、マナーモードか携帯の電源を切らなければならないと入学説明会の時に話していた。
 意図せずに校則を破り、生徒指導を受けることになるのはめんどくさいので、結斗は校門の前で携帯の電源は切ってきた。

 結斗は項垂れるように机に伏せると、目を瞑った。
 耳を覆うように腕を回すと、少しだけ騒がしさがマシになる。
 それに視界が暗くなったからかじわじわと眠気が襲ってくる。
 中学卒業後は昼くらいまで寝ていたから、今日は久々に午前中に起きた。
 だから、登校中も目がしょぼしょぼしてずっと眠たくて仕方がない。

 結斗はチラッと時計の時間を確認した。
 入学案内のスケジュールには9:00に集合と書いてあり、現在は8:45だった。
 集合時間まであと15分ほどある。

 結斗は再び伏せるように寝る姿勢に入ると、目を瞑った。
 結斗はすぐに寝付けるタイプではないので眠ることはできないが、少しでも休息を取ることにしたのだ。
 ネットの情報によると"目を閉じるだけで約70%の睡眠効果がある"らしい。
 一時、眠れない夜があったのでその時に調べたのだ。
 原因が分からなくてどうしたらいいのかと対策を調べてる時にこの情報を見つけた。

 結斗はこの情報知った時は、衝撃を受けた。
 なかなか寝付けない夜は、"早く眠らなければ"と焦っていた。
 それが緊張を高めてますます眠れない悪循環に陥ると分かっていたのに。
 でも、この情報を知ってからは無理に寝ようとは思わなったことが幸いしてか、いつの間にか目を瞑ってると普通に寝れるようになっていた。
 だから、結斗は眠たい時は目を瞑るだけでもして、休むことにしている。