"1-5"と教室プレートを掲げた引き戸を開けると、音に反応するかのように一斉に視線を向けられた。

「っ……」

 人見知りな結斗はそれだけで緊張して、一瞬息を詰めた。
 次第に散り散りになっていく視線に胸を撫で下ろすが、まだ観察するように見つめてくる人たちもいる。
 結斗はクラスメイト達に会釈するように軽く頭を下げると、扉は閉めず少し早足で教室の中に入った。
 廊下から見えた他の教室の前扉は入りやすいようにどこも開いていたからだ。
 結斗が入ってきた時は中途半端に開いていたので、前に来た人が閉めてしまった可能性が高い。

 結斗は黒板を見ると教卓に向かった。
"教卓の上に座席を書いた紙があります。それを見て自分の先に荷物を置いて下さい"
 そう書かれていたからだ。

 席を確認すると、結斗は割り振られた机にリュックをかけるとそのまま座った。
 通学バックは指定されていないため、スクールバックとリュック、半々の割合をしめていた。
 結斗は肩にかけるのが嫌なので、迷うことなくリュックを選んだ。 
 結斗の周囲の席には誰もいなかった。
 左右と後ろの席は既に荷物が置いてあったが、誰もいないのでどこか行っているようだ。
 対して前の席には何も置かれていないので、まだ教室に来ていないのだろう。
 結斗は席に座ると、周囲の様子をうかがった。
 机に掛けられたスクールバックやリュックの数の割に教室にいる人は多い。
 他クラスの人も来てるみたいで、漏れ聞こえてくる会話には「何組だった?」とか「部活って明日からだよな?」と質問する声が耳に入ってきた。
 盗み聞きする気はないが、いかせん話し声が大きいため聞こえてくるのだ。
 それに登校初日だとやはり知り合い同士と出会えると、テンションが一気に上がるらしい。
 度々、教室に人が入ってくると、男子校ならではの興奮した嬉しそうな叫び声が響く。
 野太い声で「ゔぉー!」という声が。
 今しがた入ってきたクラスメイトもそうで、そのハイテンションのまま会話が始まる。