視線を戻すと、冒頭で止まったままの携帯画面を見つめる。
 "注意"と書かれて、不快とまでもいかないがもやもやとした感情は湧いてくる。
 これが自分たち当事者ではなく創作物に当てた呼びかけだから、別に傷付く程のダメージはないが。
 これが男女間の恋愛だったら注意書きなど書かれないだろうから。
 もし書かれるとしたら次の言葉くらいだろう。
 "この物語はフィクションです。実在の人物、団体等とは一切関係がありません"と。

 仕方がないことだとは分かってる。
 当たり前だ。
 人には好みというものがあるし。
 同性同士の恋愛に忌避感を抱く人たちがいることも分かってる。
 その人たちが見ないようにワンクッション入れて配慮している人たちは親切なのだろう。
 ただ"BL"という言葉だけではダメなのだろうかとは感じてしまう。

 異性同士の恋愛だとジャンルは"恋愛"。
 男性の同性同士だと"BL"、女性の同性同士だと"GL"として割り振られてる。
 "恋愛"として一括りされず、まだ各自ジャンルとして確立してることから、世間では受け入れられているとは言えないのかもしれない。
 でも、着実に同性愛は世の中に浸透してきているといえる。

 同性カップルの婚姻が法的に認められていない日本だが、"パートナーシップ制度"を導入している地域が少しずつだが増えてきている。
 パートナーシップ制度とは各自治体がLGBTQカップルに対して独自に"結婚に相当する関係"であるとする証明書を発行し、さまざまなサービスや社会的配慮を受けやすくする制度のことである。
 一時期はニュースで頻繁に取り上げられてた記憶がある。
 やはり、メディアの力は大きい。
 同性愛に関する内容もメディアを通じて身近な存在となったように思う。
 昨今から日本blドラマや映画、アニメ化も何倍という程の割合で急激に増えた。
 その影響からか、結斗が本屋に寄ると同性愛のコーナーに男性と女性が立ち止まっている姿が多く見かけるようになったし、単行本の帯に"アニメ化決定"、"ドラマCD化決定"、"アニメ映画制作決定"と記載されてるものが、店員さんがおすすめする棚に立ち並ぶようになった。
 いつか"恋愛"が異性愛だけではなく、同性愛も同時に思い浮かべられるようになったら良いなと密かに願っていた。