斗葵の家は最寄駅から徒歩10分くらいの距離にあった。
その間、無言だったけれど、別に居心地が悪いわけではなかった。
逆に少し緊張した雰囲気が流れてた気がする。
結斗は斗葵の部屋に着くなり、意気込むように拳を握りしめた。
そして、聞かなければ後悔すると思い、聞きたい勢いのままに言葉を発したのだ。
「ねえ、さっきとどう言う意味?期待し
ていい?って」
唐突に聞いたにも関わらず斗葵は驚く様子を見せず、それどころか聞かれると思ってたみたいに笑った。
「そのままの意味。俺、結斗が好きだから。結斗が俺に言えないなら、好きな相手が俺である可能性が少しでもあるってことでしょ?」
「好き……」
「うん。俺は、恋愛感情の意味で結斗が好きだよ」
結斗はすぐに言葉の意味が理解できなかった。
だって、ありえないことを聞いてるみたいでとても信じられなかったから。
「ほ、んとに?」
「うん」
「俺のこと、好きなの?」
自分でもくどいくらい聞いてる自覚はある。
彼がこんなことを冗談で言う人ではないと分かっていたが、どうしても一度では信じられない。
だから、どうしても確認したかったのだ。
これが嘘で言ってるわけでないと。
揶揄って言ってるわけではないと。
そんな疑ってしまう結斗相手に、斗葵は真っ直ぐとシンプルな言葉をぶつけてくれた。
「好きだよ」
その言葉を聞いた瞬間、結斗は泣きたくなった。
一度も逸らされることのない視線を向けて続けてくれる斗葵にようやく彼の伝えてくれた言葉の意味が実感してくる。
嬉しくて、嬉しくて、これはやっぱり夢なんじゃないかと疑いたくなるくらいの幸福を感じる。
だって、まさか好きな相手から好きだと言われる日なんて考えたこともなかったから。
泣くのを我慢してたから少し言葉につっかえてしまう。
でも、結斗の本当の気持ちを伝えることができた。
「お、俺も!斗葵が好き」
斗葵が信じられないと言いたげに目を見開いたので、結斗はもう一度伝えた。
斗葵みたいに真っ直ぐ目を見て告白したのだ。
信じて欲しくて。
「俺も斗葵が好きなの」
「……ほんと?」
「うん。ほんとに」
結斗が笑みを見せると、斗葵の顔はみるみる赤く染まり始めた。
「え、やばっ……まじで嬉しいんだけど」
「俺も嬉しい」
2人で顔を見合わせて笑うと、どちらともなく手を繋ぐ。
温かくて、優しくてなんとも言えない感情が胸に湧いてくる。
「結斗、俺と付き合って欲しい。恋人になってくれませんか?」
「斗葵の恋人になりたいです」
泣き始めた結斗に斗葵は笑うと、そっと抱き寄せた。
いつもみたいに頭を撫でながら愛しい人が笑顔になるまで体を寄せ合ったのだ。