翌週、登校してきた斗葵は少し日焼けしていた。

 「おはよ」

 「「「おはよ」」」

 斗葵は初めて光希と春利と一緒にいる姿を見たからか、不思議そうに3人を見回した。

 「金曜に友達になったの」

 「あー、俺が試合の時か」

 斗葵が椅子に座ると、学校のチャイムが鳴り響いた。
 朝練がないと斗葵はいつもギリギリに登校してくる。
 だから、斗葵が結斗よりも先に教室にいたら朝練が有った、いなければ朝練がなかったということになる。

 HRが終わると斗葵はすぐに振り返った。

 「結斗、一緒に帰れる?」

 「帰れるよ。今日、部活ないの?」

 陸上部は木曜日と日曜日以外は練習のはずだった。
 いつもなら午後練があるはずだ。

 「日曜、試合だったから休みなんだ」

 「おお!」

 「で、時間があればなんだけど俺ん家来る?」

 「うん、行きたい!」

 月曜日に一緒に帰るのは初めてなので、なんか不思議な感じがする。

 「あっ、ねぇ。斗葵ってマメある?」

 「マメ?」

 「うん。光希の手にはあったんだよ。中学の部活でできたやつらしいけど、まだ残ってるんだって。握手した時、かたかったなー」

 結斗は自分の手のひらと比べる。
 光希も春樹も少しゴツゴツしていたが、まだ鍛えたことがない結斗の手のひらは柔らかかった。

 「へー、そうなんだ」

 斗葵は体をこちらに向けると片手を差し出してきた。

 「ん?」

 「マメあるか確かめたいんだろ?」

 「うん」

 「ほらっ、手」

 「あっ、うん」

 結斗はギュと手を握った。

 「おお、ある」

 「懸垂やるからな」

 斗葵は反対の手のひらを見せてくれた。
 そこにはいくつかのマメがある。

 「結構硬いよ」

 斗葵が指先を下げて触りやすいようにしてくれたので、結斗はそっと押してみた。

 「ほんとだ。結構硬い」

 「だろ」

 結斗は手を下ろすと同時に

 (あれ?)

 と思った。

 だって、必要がなかったから。

 (こうして見せてくれたら、握手する必要はなかったんじゃ?)

 そう思ったが、斗葵と握手できたことが嬉しくてその疑問はすぐにどっかいってしまった。

 いつもの駅を通り過ぎて、斗葵の最寄駅に降りるとホームには他校の制服を着た学生たちもいた。
 丁度下校時間が被ったみたいで、皆んな外に向かって歩いていく。

 改札を出ると斗葵ん家で食べるものを買い出ししようということで、近くのコンビニで調達することになった。
 駐輪場の横を通った時。
 結斗には聞き覚えのない少し高めの声が隣の彼の名前を呼んだ。