高校生活にも慣れた頃。
 結斗はいつも通り、斗葵と一緒に学食をにきていた。
 2人とも肉系が好きなので、結斗は唐揚げマヨ丼、斗葵は豚丼を注文した。
 向かい合う形で昼食をとっていると、斗葵が何か思い出したかのようにハッと口を開くと、手を止めた。

 「そうだ。俺、金曜試合だから学校休むな」

 「試合?」

 食べようとしていた唐揚げを元の位置に戻すと、結斗は箸を持ったまま聞いた。

 「そー。金、土、日と試合なんだ。俺が出るのは日曜だけど、応援やサポートがあるから金曜も休む感じ」

 「……そうなんだ」

 斗葵が再び食べ始める。
 結斗は視線を下げると、先ほど手をつけていた唐揚げに箸を伸ばした。

 (ってことは、斗葵とは3日間会えないんだ)

 学校があって斗葵と会えないのは初めてだった。
 毎週、休日の2日間会わないだけだったから変な感じがする。
 結斗はゆっくりと口を動かすと、ごくりと飲み込んだ。

 「試合、頑張ってね」

 「ありがとう」

 結斗は頷くと、唐揚げ丼を差し出した。

 「頑張ってねってことで1つどうぞ」

 「いいの?」

 「うん」

 「よっしゃ!ありがとう」

 斗葵は嬉しそうに唐揚げを1つ箸で掴むと、そのまま口に運んだ。

 「ん、これで試合も頑張れるわ」

 「少しでも力になれたなら良かった」

 結斗は斗葵の満足そうな表情ににっこりと笑った。

 斗葵はえくぼがある。
 結斗の周りにはえくぼがある男はいなかったので、女の子以外にもできるんだと軽く衝撃を受けたものだ。
 その後、テレビに出演してる男性芸能人を見て案外存在することに気付いたが。