「でも、斗葵って推薦だったんだね」
斗葵は"陸上部に《《入ってる》》"と言っていた。
まだ部活動体験すらない時に入部してるっていうことは、推薦入学してきたということを意味している。
「そー。陸上で推薦してもらえたんだ」
「凄いね。走るの?」
「いや、跳ぶ方。HJしてるんだ」
「HJ?」
「走高跳っていう競技。走って、片足で踏み切って、バーを跳びこえる競技。分かる?」
「背中で跳ぶやつ?」
結斗は以前テレビで見た映像を思い浮かべた。
短い助走から片足で踏み切り、自分よりも高いバーを背中で跳び超える。
その映像を見た時は思わず魅入ってしまった。
同じ人間なのにこんなに高いものを跳べるんだと感嘆したのだ。
「そー。背中で跳ぶのは背面跳びって言うんだ。跳び方もいろいろあるんだよ」
「バーを跨ぐ跳び方なら体育でやったことある」
「それは、はさみ跳びだな」
体育でやった時は、自分の腰より下にあるバーを跨ぐ形で跳んだ。
1m30くらいだっただろうか。
それくらいの高さでも難しくてなかなかクリアすることができなかった記憶がある。
「他にもあるの?」
「あるよ。ベリーロールってやつ」
斗葵は携帯を操作すると、映像を見せてくれた。
背面跳びとは逆に腹から跳ぶ方法だった。
「初めて見る」
「この跳び方する人はなかなかいないからな」
「難しそう」
「むずいよ。俺もできない」
思わず斗葵を2度見してしまう。
てっきり、競技をやっている人なら出来ると思っていた。
「そうなの?」
「そう。何回やってもできなかったな」
斗葵は携帯をポケットしまおうとしたが、ふと何かに気付いたかのようにじっとこちらを見てきた。
「結斗、携帯ある?」
「あるよ。……ほらっ」
鞄から携帯を取り出すと、目の前に掲げる。
「連絡先、交換しよ」
「する!」
結斗は慌てて携帯の電源を入れるとSNSアプリを起動した。
QRコードを読み取って友達追加すると、斗葵のプロフィールが表示される。
「犬?」
斗葵のプロフィール画像はトイプードルの写真だった。
「かわいい」
「だろ。イヴちゃんって言うんだ」
斗葵は自慢げに話す。
結斗はちゃんづけで呼ぶ斗葵のことも
(かわいい……)
と思った。
「イヴちゃん、女の子?」
「そ。12月24日生まれでイヴ」
「かわいい」
結斗は斗葵のプロフィール画像をタップして、アップにする。
「……いいな。俺の家は姉ちゃんが動物アレルギーだから、一緒に暮らせないんだ」
結斗は動物が大好きだが、残念ながら飼うことは反対されていた。
「姉ちゃんがいるのか」
「うん。2人。斗葵は?」
「俺は1人兄がいる」
結斗には5つ上の長女と、2つ上の次女がいる。
長女は動物アレルギー持ちだから、残念ながら結斗は犬と一緒に暮らしたくても暮らせないのだ。
長女は既に社会人で実家から出て一人暮らしをしているが、定期的に実家に帰ってくるので、我が家に動物は迎え入れないようにしている。
そのことを斗葵に説明する。
すると、斗葵はとても魅力的な誘いをしてくれた。
「なら、会いにくる?」
「え」
「結斗の姉ちゃんが暫く帰ってこない時期とかに」
「いいの?」
「ああ。イヴは人が大好きだからかまってくれると凄い喜ぶ」
「なら、行きたい」
「なら、また予定決めよう」
「うん!」
結斗は嬉しくて満面な笑みを浮かべた。
何と言ったってイヴちゃんに触れるのだ。
しかも、斗葵の家に遊びに行く約束をしてしまった。
楽しみすぎて思わず鼻歌を歌いそうになったが、すんでのところで耐えた。
流石にそごまで気分が高揚していることをバレるのは恥ずかしかったから。
「楽しみ!」
「俺も楽しみ」
「イヴちゃんの写真って他にもある?」
「あるよ」
斗葵は"イヴ"と題名がついた写真フォルダーを開くと色々と見せてくれた。
寝てる写真だけでなく、誕生日を祝っている動画とか。
それらを微笑ましく眺めていると、ついに結斗が降りる駅に到着してしまった。
行きと違って目的地に到着するのが早く感じる。
結斗は電車が止まると斗葵に手を振った。
「じゃー、またね」
「おう、明日」
結斗が降りると、扉が閉まりゆっくりと電車が動き始める。
斗葵が見えなくなるまで見送ると結斗はその場を離れて、真っ直ぐ家に帰ったのだ。
斗葵は"陸上部に《《入ってる》》"と言っていた。
まだ部活動体験すらない時に入部してるっていうことは、推薦入学してきたということを意味している。
「そー。陸上で推薦してもらえたんだ」
「凄いね。走るの?」
「いや、跳ぶ方。HJしてるんだ」
「HJ?」
「走高跳っていう競技。走って、片足で踏み切って、バーを跳びこえる競技。分かる?」
「背中で跳ぶやつ?」
結斗は以前テレビで見た映像を思い浮かべた。
短い助走から片足で踏み切り、自分よりも高いバーを背中で跳び超える。
その映像を見た時は思わず魅入ってしまった。
同じ人間なのにこんなに高いものを跳べるんだと感嘆したのだ。
「そー。背中で跳ぶのは背面跳びって言うんだ。跳び方もいろいろあるんだよ」
「バーを跨ぐ跳び方なら体育でやったことある」
「それは、はさみ跳びだな」
体育でやった時は、自分の腰より下にあるバーを跨ぐ形で跳んだ。
1m30くらいだっただろうか。
それくらいの高さでも難しくてなかなかクリアすることができなかった記憶がある。
「他にもあるの?」
「あるよ。ベリーロールってやつ」
斗葵は携帯を操作すると、映像を見せてくれた。
背面跳びとは逆に腹から跳ぶ方法だった。
「初めて見る」
「この跳び方する人はなかなかいないからな」
「難しそう」
「むずいよ。俺もできない」
思わず斗葵を2度見してしまう。
てっきり、競技をやっている人なら出来ると思っていた。
「そうなの?」
「そう。何回やってもできなかったな」
斗葵は携帯をポケットしまおうとしたが、ふと何かに気付いたかのようにじっとこちらを見てきた。
「結斗、携帯ある?」
「あるよ。……ほらっ」
鞄から携帯を取り出すと、目の前に掲げる。
「連絡先、交換しよ」
「する!」
結斗は慌てて携帯の電源を入れるとSNSアプリを起動した。
QRコードを読み取って友達追加すると、斗葵のプロフィールが表示される。
「犬?」
斗葵のプロフィール画像はトイプードルの写真だった。
「かわいい」
「だろ。イヴちゃんって言うんだ」
斗葵は自慢げに話す。
結斗はちゃんづけで呼ぶ斗葵のことも
(かわいい……)
と思った。
「イヴちゃん、女の子?」
「そ。12月24日生まれでイヴ」
「かわいい」
結斗は斗葵のプロフィール画像をタップして、アップにする。
「……いいな。俺の家は姉ちゃんが動物アレルギーだから、一緒に暮らせないんだ」
結斗は動物が大好きだが、残念ながら飼うことは反対されていた。
「姉ちゃんがいるのか」
「うん。2人。斗葵は?」
「俺は1人兄がいる」
結斗には5つ上の長女と、2つ上の次女がいる。
長女は動物アレルギー持ちだから、残念ながら結斗は犬と一緒に暮らしたくても暮らせないのだ。
長女は既に社会人で実家から出て一人暮らしをしているが、定期的に実家に帰ってくるので、我が家に動物は迎え入れないようにしている。
そのことを斗葵に説明する。
すると、斗葵はとても魅力的な誘いをしてくれた。
「なら、会いにくる?」
「え」
「結斗の姉ちゃんが暫く帰ってこない時期とかに」
「いいの?」
「ああ。イヴは人が大好きだからかまってくれると凄い喜ぶ」
「なら、行きたい」
「なら、また予定決めよう」
「うん!」
結斗は嬉しくて満面な笑みを浮かべた。
何と言ったってイヴちゃんに触れるのだ。
しかも、斗葵の家に遊びに行く約束をしてしまった。
楽しみすぎて思わず鼻歌を歌いそうになったが、すんでのところで耐えた。
流石にそごまで気分が高揚していることをバレるのは恥ずかしかったから。
「楽しみ!」
「俺も楽しみ」
「イヴちゃんの写真って他にもある?」
「あるよ」
斗葵は"イヴ"と題名がついた写真フォルダーを開くと色々と見せてくれた。
寝てる写真だけでなく、誕生日を祝っている動画とか。
それらを微笑ましく眺めていると、ついに結斗が降りる駅に到着してしまった。
行きと違って目的地に到着するのが早く感じる。
結斗は電車が止まると斗葵に手を振った。
「じゃー、またね」
「おう、明日」
結斗が降りると、扉が閉まりゆっくりと電車が動き始める。
斗葵が見えなくなるまで見送ると結斗はその場を離れて、真っ直ぐ家に帰ったのだ。