「結斗ってもう帰る?」
振り返った斗葵はリュックを手にしていた。
斗葵も帰ろうとしてたみたいで頷くと一緒に帰ることを誘われた。
「うん。帰る」
「なら、一緒に帰ろ」
「うん」
斗葵と一緒に学校を出ると、まずは自転車置き場に向かった。
本来なら徒歩通学だが、陸上部は学校から少し離れた競技場に練習へ行くから自転車通学の許可があるらしい。
「鞄、カゴに入れて」
「いいの?」
「いいよ」
斗葵は自転車を引いてくると、荷物を籠の中に入れさせてくれた。
学校に行ってたのに身軽なのは違和感がある。
でも、他の人は荷物を持ってるのに自分が持ってないのは何だか優越感を感じて気分が良かった。
高校の最寄り駅に到着すると、あと数分で電車が発車する時刻だった。
斗葵と慌てて改札を通り抜けると、そのまま駆け抜ける勢いで階段を。
息切れをしながらホームにたどり着くと、丁度電車が止まるところだった。
電車の発車時刻に間に合ったことに安心して、斗葵と顔を見合わせる。
「良かった」
「だな。ギリギリだったな」
隣同士で座席に座ると一息つくように溜息を吐く。
「疲れた……」
結斗は久々にこんなに走ったので、足の倦怠感が既にやばかった。
(運動不足だな)
両手で拳を作るとふくらはぎをポンポンと軽く叩く。
外側を叩くように揉むんでみると気持ちが良かったが、人目が気になり僅かな時間で手を下ろした。
代わりにまだ荒れている呼吸を落ち着かせることに集中する。
隣に座る斗葵は電車に乗車する前に普段通りの呼吸をしていたが、結斗はまだ呼吸が苦しかった。
(これが運動部との差か……)
大きく呼吸を繰り返していると、次に停車する駅がアナウンスされる。
乗車した電車は各駅停車なので、2分後にはそこに停まるのだろう。
結斗は呼吸が落ち着くと、座席にもたれるように背中を預けた。
斗葵はどうやら呼吸が落ち着くのを持っていてくれたらしい。
普通に話せるレベルまで回復すると、斗葵から声をかけてくれた。
「結斗って、××中学出身って言ってたよな?」
「うん。斗葵は○○中でしょ?」
「そー。結斗と母校が近くてびっくりした」
「俺も。まさかの2駅差という近さ。自己紹介で、えっ?って思ったもん。」
そう斗葵の中学校は結衣の母校からあまり離れてなかった。
斗葵が『○○中学出身』と言った瞬間、結斗は驚いてかたまってしまった。
油断してたこともあって、自分の自己紹介の時はすぐに言葉が出てこなかった。