恋人なのはこの場だけ

「普通、好きでもない相手の写真、ホーム画面にしないだろ。本当はカッコいいところ見てもらってから、カッコよく決めたかったのに……」
「でもなんで僕なんか」
「僕なんか、じゃない。そりゃあ小学生の時は友達としか思ってなかったけど、文化祭で虎太郎が撮った写真を見てさ、なんでここに映ってるのが俺じゃないんだろうって思ったんだ。本当に羨ましくて……。好きだって自覚したら、居ても立っても居られなくなって、鬼瓦に全力で頼み込んだ」
「もしかして姫ちゃんが紫リボンはもういいって言ってたのって」
「デートを取り付けてもらう対価として、鬼瓦には後日、推し活界隈で有名な必勝祈願守りを渡す約束になってる。……年明けに水泳部で近くまで行くから」

 推しカラーが出なかったのに妙に機嫌がよかったのは、初めから目的のアイテムが別にあったからだったのか。
 赤いリボンだけでもと渡そうとすれば「そのリボンは記念に持ってなよ」なんて、姫ちゃんらしくないとは思ったのだ。約一ヶ月ぶりに謎が解けて少しスッキリする。

「それで、返事聞いてもいい?」
「写真くらい何枚でも撮るよ」
「写真を撮って欲しいわけじゃ……。いや、俺の言い方が悪かったな。虎太郎、好きだ。俺の恋人になってほしい」
「僕でよければ。あ、でも」
「でも?」
「ホーム画面は変えてほしいかな。大きなパフェと映ってる写真をいろんな人に見られてるのは少し恥ずかしくて……」
「俺と二人ならいい?」
「二人なら」
「じゃあ虎太郎が一緒に撮って」

 隼人君にスマホを渡されたかと思えば、右腕で肩を抱かれた。
 そのまま頬がピタリとくっつく。濡れた髪がくすぐったい。けれどどこか懐かしさも感じる。

 友達だったあの頃もこうして肩をくっつけてアイスを食べたっけ。
 随分と身長が大きくなっても、関係が変わっても、こうして隣にいられることが嬉しくて。

「じゃあ撮るね」

 借りたスマホでシャッターを切る。
 画面の中の隼人君は子供の時のような、あどけない笑みを浮かべていた。僕の表情は少し硬いけれど、思い出を重ねていくうちに自分が映ることも慣れていくことだろう。