恋人なのはこの場だけ

「渡すだけなら大丈夫ですよ。学校のブログにも使用するかもしれないので、部活ブログに使うのは避けてもらえればと」
「分かった。渡した後は使わないようにする。えっとメモリを挿して、男子水泳部は……これか。俺のパソコンにコピペしてっと」

 渡辺先生は渡したメモリからデータをコピーする。
 コピーしたファイル名の頭に『2026年度』と追加してから、水泳部のフォルダに移した。他にも大会名が記載されたフォルダが並んでいる。ブログ用の写真が入っているのだろう。

「じゃあこの後確認しておくから」
「明日のお昼に聞きに来ますね」
「隼人に伝言しとくのでもいいんだが……。まぁ本人の方が確実だよな。明日の昼なら職員室にいる予定だから、昼飯食べた後にでも来てくれ」
「はい、よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げて、また部室に戻る。
 職員室がある一階から部室がある三階まで何度も往復するのは大変だ。鍵を開けてUSBメモリを引き出しに戻す。鞄を肩から下げ、今度は部室の鍵の返却のために職員室に向かう。

「待たせてごめん」
 急いだつもりだったが、下駄箱ではすでに隼人君が待っていた。
 髪がまだほんのりと濡れている。声に気付き、軽く手を上げる。ちょっとした仕草も様になっている。

「俺も今来たところだから。それで聞きたいことって」
「実はさっき、田畑君から隼人君のスマホのホーム画面が僕になってるって聞いて」
「あー、えっとそれは……」

 あからさまに彼の視線が泳ぐ。
 言いよどむ姿は、新しいゲーム機やスマホの設定を姫ちゃんに頼む時の猛兄ちゃんとそっくりだ。

「待ち受けシャッフルに間違えて入れちゃったとかだよね。僕、何回か設定したことあるから、よかったら別の設定にするの手伝うよ」
「え」