恋人なのはこの場だけ

「今日は写真部の鬼瓦弟が写真撮影に来てくれた。お前ら、弟君に迷惑をかけるなよ」

 今日は部活紹介用の写真撮影日。
 僕の担当は柔道部と男子水泳部。思ったよりも希望が被らず、サクサクっと決まった。

 手には防水対応のデジタルカメラ。
 そして服も濡れてもいいように、上下ジャージに着替えている。

「写真部の小田です。本日はよろしくお願いします」
「よろしゃーっす」

 ズラリと並んだ男子水泳部員が挨拶をする。頭を上げると、隼人君がひらひらと手を振っていた。他の部員の手前、振り返すことはできない代わりに笑みを向ける。

「ぶちょ〜、隼人が浮かれててウザいです」
「弟君来てくれて嬉しいからって顔緩みすぎだろ」
「隼人、浮かれてタイム落とすなよ」
「今日は最速記録出すつもりなんで」
「浮かれてんな〜」

 部員達は隼人君に呆れた視線を向けたり、軽く叩いたり。口ではいろいろ言いながらも仲の良さが窺える。

「それじゃあいつも通り練習するけど、好きに撮ってくれていいから。椅子これな~」

 先月、部長に就任した田畑君は椅子まで用意してくれる。クラスが違って今まで話したことはなかったが、気安い雰囲気でホッとする。

「ありがとう。僕、泳いでいる人を撮るのは初めてだから、多めに撮るけど、ちゃんと撮れている写真以外は削除して、残した写真も顧問の渡辺先生に確認してもらうことになってるから安心してもらえると」
「大丈夫、大丈夫。鬼瓦弟を警戒する奴なんてうちの部活にいないし、女子達も弟君がちゃんと配慮してくれるって分かってるから。撮りづらかったら声かけてくれればレーン移動したり、撮りやすそうなやつ呼んだりするから」
「ありがとう」

 部長の田畑君に頭を下げ、プールサイドにいる監督と顧問に改めて挨拶をする。それから遅れてやってきた女子水泳部の部長にも挨拶を。女子水泳部は朝練時間に撮影を完了していることもあり、すでに話は伝わっていたようだ。

 それから女子部員が映り込まないように位置を調整しながら、写真を撮影していく。
 初めのうちは上手く捉えられなかったが、慣れればシャッターを押すタイミングや撮りやすい位置がなんとなく分かってくる。