恋人なのはこの場だけ

「急ぎの連絡か」
「ううん、ごめんね。急ぎじゃなかったみたい」

 誤魔化すように笑う。思えば、先ほど隼人君の友達も似たようなことを言っていた。
 最近、脛蹴って逃げるってワードが流行っているのだろうか。

 学校でも人気者の彼が、僕に変なことなんてするはずない。
 あるとしたら、僕が変な勘違いをしそうになるくらい。
 自覚しそうになる思いから目を逸らして、スマホをポケットにしまった。

「リボン何色だろうね」
「開けてみて」
「僕でいいの?」
「ああ。紫が来るといいな」
「うん。紫が来ますように……」

 そう念じて小さな袋を開く。中に見えたのは、赤いリボンだった。姫ちゃんの推しメンカラーとは違う。それでも隼人君にも一緒に確認してもらうために一度リボンを袋から出す。

「あれ、何か入ってる?」
 リボンの間に挟まっていたのは、一枚のメモ用紙。

「なんて書いてあるんだ?」
「『おめでとうございます。赤いリボンを手に入れたあなた達は運命の赤い糸で結ばれているでしょう』だって。赤が当たりなのかな」
「運命……」

 メモを見せながら読み上げると、隼人君の顔が真っ赤になる。旬のサクランボみたいだ。見ていると僕まで赤さが伝播してしまいそうだ。

「えっと、この手のイベントではよくある演出だから」
 椅子から立ち上がり、彼の耳にコソッと伝える。赤いリボンが出たからだろうか。周りの視線が先ほどよりも集まっている。演出だなんて冷めるような話、普通に話せないと思ったのだ。けれど隼人君の顔は赤いまま。俯いてしまっている。

 演出だろうと、僕と仲がいい恋人だと思われたくなかったのだろうか。
 姫ちゃんの頼みとはいえ、この場だけとはいえ、僕と隼人君とでは釣りあわない。その事実を突きつけられたようで胸が痛んだ。