恋人なのはこの場だけ

「飲み物の写真撮っていい?」
「いいよ。俺のことも撮って」
「隼人君のこと?」
「いつも鬼瓦のこと撮ってるんだろ? 文化祭に写真飾ってあった」
「写真部の展示、見に来てくれたの? ありがとう」
「虎太郎の撮る写真は家族写真みたいで、なんというか、すごくよかった」
「普通に撮ってるつもりなんだけどね……」

 部活案内で見た夜空の写真が印象的で、あんな写真が撮りたいと写真部に入部した。自分でも写真の撮り方を勉強している。だが技術が一向に上がらない。

 姫ちゃんからは「虎太郎には先輩みたいな写真を撮るセンスはない」とバッサリ切り捨てられてしまった。

 実際、隼人君と同じ意見の人は多い。
 文化祭展示の際、教室の横に感想ノートを設置しているのだが、僕の写真に対する感想は「家族写真みたい」「懐かしい写真」「ホッとする」というコメントばかりが寄せられていた。

 どれも好意的なコメントだ。店番をしている時に褒めてくれる声をいくつも聞いているし、ポストカードも初めに用意した分では足りず、追加で刷りなおしたくらい。

 だが目指すべきところとは全く違うだけに、褒められる度に複雑な思いは募っていく。

「不満か? 俺は好きだけどなぁ。写ってる鬼瓦は自然体で、風景写真も地元が好きなのが伝わってくる。さっき撮ってた写真も虎太郎が撮った写真だなって感じだった」
「不満、ではないけど、僕が撮りたい写真とはちょっと違うかな。やっぱり場所選びから違うのかなぁ」

 文化祭の展示に提出したうちの一枚は、加藤君と加藤君の妹と一緒に行った公園で撮ったもの。花がきれいに咲いているからと一緒に撮影したのだ。

 だが同じ被写体でも、加藤君の写真には僕のような感想は寄せられない。
 実際、近くの公園に咲いていたとは思えないほど、綺麗に咲く花が表現されていたし、コメントノートでも絶賛されていた。

 撮ったばかりの写真を見せてもらって落ち込んだくらいだ。
 その後、加藤君の妹の「おにーちゃんのよりこたろーくんのおはなのほうがかわいい!」発言により、僕なんて比べ物にならないほどに加藤君は落ち込んでいたのだが。

「でも俺はあの写真見て、虎太郎と遊んでた頃のこと思い出した。隣に飾られていた写真に写る鬼瓦はすごく羨ましくて……。本人に伝えたらすっげぇドヤ顔でむかついた」

 話しながら思い出したのだろう。隼人君はムッとした顔をする。