11 2月、そして旅立ちの3月
春高が終わってから、3年生は引退し、夕陽ヶ浜学園男子バレーボール部は2年生を中心とした新体制で再スタートを切った。目標は変わらず全国制覇。再びあの頂点を目指してチームを作っていく。
2月も半ばにさしかかり、3年生は自由登校の日が増えた。空は、大学からの推薦で進学が決まっていたので、定期的に部活に顔を出してはいたが、それも大学の練習に参加するようになってからは、少しずつ減っていた。
寮もあと半月ほどで退寮し、卒業式を終えるといよいよこの学園を旅立っていく。翔太と空は、お互い忙しくしていたが、それでもその合間を縫って、二人だけの時間を大切に過ごしていた。
「空くん、だいぶ荷物減ったなぁ。」
「少しずつ実家に送ってるからね。」
毎日のように夜はおなじ布団で眠り、同じ布団で朝を迎えた。翔太は空を抱きしめながら、すっかり空になった棚を見つめて言った。それに空はなんでもないような声色で返事をする。
「大学は、アパート借りるん?」
「うん。そうだよ。もう部屋も決めてきた。」
「はや。いつの間に。」
「ねぇ翔太。なんで俺が一人暮らしするって決めたか分かる?」
「え、それは大学に通いやすく・・・」
「ばーか、ほんとに。」
「え、違うん?」
「実家からでも十分大学には通えるの。それでも、一人暮らしするって決めた理由なんて一つしかないだろ?」
そんなことを言われたら、嫌でも期待してしまう。翔太が空に会いに行きやすいように、会いに行った時、誰にも邪魔されずに二人の時間を楽しめるように・・・そんな都合のいいことがあっていいのだろうか。
「でも・・・俺・・・そんなん期待してしまう。」
「ふはっ。期待しろよ。はい。これ」
そう言ってベッドのすぐそばにある棚に手を伸ばした空は、ある物を翔太に手渡した。どこにでもよくある形のそれの意味を翔太は瞬時に理解した。
「これって・・・」
「そう、合鍵。お前に一つ渡しとく。」
「い、いいんですか?」
「うん。無くすなよ。あとそれ、一応バレンタイン。」
「空くん!!」
「いてっ。力強いって。」
「ごめん・・・。」
空がこの先のことをちゃんと考えてくれている。不安なことがないと言えば嘘になるけど、それだけで前を向けるような気がした。
春高が終わってから、3年生は引退し、夕陽ヶ浜学園男子バレーボール部は2年生を中心とした新体制で再スタートを切った。目標は変わらず全国制覇。再びあの頂点を目指してチームを作っていく。
2月も半ばにさしかかり、3年生は自由登校の日が増えた。空は、大学からの推薦で進学が決まっていたので、定期的に部活に顔を出してはいたが、それも大学の練習に参加するようになってからは、少しずつ減っていた。
寮もあと半月ほどで退寮し、卒業式を終えるといよいよこの学園を旅立っていく。翔太と空は、お互い忙しくしていたが、それでもその合間を縫って、二人だけの時間を大切に過ごしていた。
「空くん、だいぶ荷物減ったなぁ。」
「少しずつ実家に送ってるからね。」
毎日のように夜はおなじ布団で眠り、同じ布団で朝を迎えた。翔太は空を抱きしめながら、すっかり空になった棚を見つめて言った。それに空はなんでもないような声色で返事をする。
「大学は、アパート借りるん?」
「うん。そうだよ。もう部屋も決めてきた。」
「はや。いつの間に。」
「ねぇ翔太。なんで俺が一人暮らしするって決めたか分かる?」
「え、それは大学に通いやすく・・・」
「ばーか、ほんとに。」
「え、違うん?」
「実家からでも十分大学には通えるの。それでも、一人暮らしするって決めた理由なんて一つしかないだろ?」
そんなことを言われたら、嫌でも期待してしまう。翔太が空に会いに行きやすいように、会いに行った時、誰にも邪魔されずに二人の時間を楽しめるように・・・そんな都合のいいことがあっていいのだろうか。
「でも・・・俺・・・そんなん期待してしまう。」
「ふはっ。期待しろよ。はい。これ」
そう言ってベッドのすぐそばにある棚に手を伸ばした空は、ある物を翔太に手渡した。どこにでもよくある形のそれの意味を翔太は瞬時に理解した。
「これって・・・」
「そう、合鍵。お前に一つ渡しとく。」
「い、いいんですか?」
「うん。無くすなよ。あとそれ、一応バレンタイン。」
「空くん!!」
「いてっ。力強いって。」
「ごめん・・・。」
空がこの先のことをちゃんと考えてくれている。不安なことがないと言えば嘘になるけど、それだけで前を向けるような気がした。