8 11月
「今度デートしよう。」
空からの突然の言葉に、翔太は自分がどう返答したのかほとんど覚えていない。「はい」なのか「うん」なのか「え」なのか・・・。一つだけ確かなことは、空の誘いを翔太が断るはずがないということだけだった。
事の発端は数日前。翔太が空の誕生日について触れたことだった。言わずもがな、翔太は中学生のころから空に憧れ続けている。空は何度か雑誌にも出たことがあるし、誕生日なんていうものは、ファンとしては当たり前に知っておくべき情報なのである。
「空くん、もうすぐ誕生日ですよね。11月10日。」
「・・・え・・・なんで知ってんの?」
若干気味悪そうに空は翔太を見た。翔太としては、空がどうしてそんなに不審がっているのか、理解が出来ずにいた。
「え、だって、雑誌に載っとったし・・・」
「いや、だからっていちいち覚えてないでしょ?」
「覚えるやろ!普通。」
「覚えないって。」
「俺を誰やと思ってるんですか?日下部空のガチファンですよ。」
「・・・なに、そのガチファンって。」
「ガチファンはガチファンです。ガチファンにとって、誕生日なんていうのは当たり前にしっておくべき情報なんです。」
「・・・ま、いいや。」
何かを諦めたように呟いた空は、「そういえば・・・」と翔太の方を向いた。
「お前は誕生日いつなの?」
「えっ。」
「だから、お前の誕生日。」
「えっと・・・11月15日です。」
「へぇ。近いじゃん。」
「そ、そうなんです。やから、すぐ覚えました。」
「ふ~ん。」
そして、なんとなくそのまま会話は終わってしまった。翔太としては、空の誕生日にプレゼントを用意するために、誕生日の確認をしただけだったので、目的は果たした。あわよくばどこか出かけられないかと思っていたが、結局言い出せずに終わってしまっていた。
そして数日後、突然空から「今度デートしよう。」と声をかけられて、翔太は驚いた。戸惑いつつも、空からの誘いを翔太が断るはずもなく、二つ返事で了承し、さらにその数日後、体育館が使用できずに部活がオフになった日、翔太と空は街へ繰り出した。
街には二人と同じように制服を着た高校生たちがたくさんいた。皆楽しそうに写真を撮ったり、買い物をしたり・・・そういえば、4月にここへ来たばかりの翔太は、こんな風にゆっくりと街を散策したのは初めてだ。毎日のように朝練があり、昼間は授業、午後はまた遅くまで練習をする。そんな毎日を過ごしているうちにあっという間に秋になった。
「うわ~すごいなぁ~。」
「お前、この辺来るの初めてなの?」
「そうですよ。毎日部活やし。そんなん空くんが一番よく知ってるやん。」
「まぁそうだけど。」
「でも、なんか神戸の街にも似てて嬉しいです。」
「・・・帰りたいとか思わないの?」
「ホームシックってことですか?」
「いや。うん。まぁ。」
「そりゃ、4月に新幹線でこっちに来た時はちょっと不安やったけど、今は全然。」
「ふーん。」
「空くんおるし。」
「・・・あっそ。」
翔太がそう言うと空は素っ気なく返事をして。突然歩くスピードを速めて先に行ってしまった。それを慌てて追いかけるけど、翔太はもう気付いていた。素っ気ない返事は空の照れ隠しであること、照れていることを隠すためにわざと速く歩いていること。翔太の顔は今、だらしなく緩んでいると思う。
「待ってくださいよ~」
わざとふざけた声を出しながら、翔太は空を追いかけた。
「今度デートしよう。」
空からの突然の言葉に、翔太は自分がどう返答したのかほとんど覚えていない。「はい」なのか「うん」なのか「え」なのか・・・。一つだけ確かなことは、空の誘いを翔太が断るはずがないということだけだった。
事の発端は数日前。翔太が空の誕生日について触れたことだった。言わずもがな、翔太は中学生のころから空に憧れ続けている。空は何度か雑誌にも出たことがあるし、誕生日なんていうものは、ファンとしては当たり前に知っておくべき情報なのである。
「空くん、もうすぐ誕生日ですよね。11月10日。」
「・・・え・・・なんで知ってんの?」
若干気味悪そうに空は翔太を見た。翔太としては、空がどうしてそんなに不審がっているのか、理解が出来ずにいた。
「え、だって、雑誌に載っとったし・・・」
「いや、だからっていちいち覚えてないでしょ?」
「覚えるやろ!普通。」
「覚えないって。」
「俺を誰やと思ってるんですか?日下部空のガチファンですよ。」
「・・・なに、そのガチファンって。」
「ガチファンはガチファンです。ガチファンにとって、誕生日なんていうのは当たり前にしっておくべき情報なんです。」
「・・・ま、いいや。」
何かを諦めたように呟いた空は、「そういえば・・・」と翔太の方を向いた。
「お前は誕生日いつなの?」
「えっ。」
「だから、お前の誕生日。」
「えっと・・・11月15日です。」
「へぇ。近いじゃん。」
「そ、そうなんです。やから、すぐ覚えました。」
「ふ~ん。」
そして、なんとなくそのまま会話は終わってしまった。翔太としては、空の誕生日にプレゼントを用意するために、誕生日の確認をしただけだったので、目的は果たした。あわよくばどこか出かけられないかと思っていたが、結局言い出せずに終わってしまっていた。
そして数日後、突然空から「今度デートしよう。」と声をかけられて、翔太は驚いた。戸惑いつつも、空からの誘いを翔太が断るはずもなく、二つ返事で了承し、さらにその数日後、体育館が使用できずに部活がオフになった日、翔太と空は街へ繰り出した。
街には二人と同じように制服を着た高校生たちがたくさんいた。皆楽しそうに写真を撮ったり、買い物をしたり・・・そういえば、4月にここへ来たばかりの翔太は、こんな風にゆっくりと街を散策したのは初めてだ。毎日のように朝練があり、昼間は授業、午後はまた遅くまで練習をする。そんな毎日を過ごしているうちにあっという間に秋になった。
「うわ~すごいなぁ~。」
「お前、この辺来るの初めてなの?」
「そうですよ。毎日部活やし。そんなん空くんが一番よく知ってるやん。」
「まぁそうだけど。」
「でも、なんか神戸の街にも似てて嬉しいです。」
「・・・帰りたいとか思わないの?」
「ホームシックってことですか?」
「いや。うん。まぁ。」
「そりゃ、4月に新幹線でこっちに来た時はちょっと不安やったけど、今は全然。」
「ふーん。」
「空くんおるし。」
「・・・あっそ。」
翔太がそう言うと空は素っ気なく返事をして。突然歩くスピードを速めて先に行ってしまった。それを慌てて追いかけるけど、翔太はもう気付いていた。素っ気ない返事は空の照れ隠しであること、照れていることを隠すためにわざと速く歩いていること。翔太の顔は今、だらしなく緩んでいると思う。
「待ってくださいよ~」
わざとふざけた声を出しながら、翔太は空を追いかけた。