「どうしたの?」
「え?」

 祝勝会と称し、チームでご飯を食べた後、夜遅い時間になって帰寮した翔太に、空が声をかけた。
「元気ないじゃん。優勝したのに。」
「あーいや・・・優勝したことはめっちゃ嬉しいんですけど、やっぱり悔しい。」
「・・・なんで?」
「なんでって・・・俺、なんにもできひんかった。地区大会、県大会合わせてほんまにちょっとサーブ打たせてもらえただけ・・・今日の決勝戦見とって、俺も次はもっと・・・もっと活躍したいって思いました。」
「ユニホームもらえてるだけで、すごいことだと思うけどね。」
「それは分かってます。ありがたいです。でも、俺には絶対に達成したい目標があるから・・・。」

 そこで言葉を切った翔太は、空をまっすぐに見つめた。いつも以上に真剣な翔太の表情に、空も茶化すことをやめて、翔太の次の言葉を待った。

「俺、絶対に空くんと同じコートに立ちます。絶対。」
「うん。」

 空はわずかに微笑むと、翔太の肩を軽く叩いて部屋に戻ると「あー疲れたー」とベッドに倒れ込んだ。ほとんどの試合がフル出場だった空は、相当疲れがたまっているはずだ。完全にスイッチが切れた空の邪魔をしないように、翔太も寝支度を整えて、部屋の電気を消した。


 空くん、おやすみなさい。試合、ほんまにお疲れ様でした。