1日寝たら復活です。白井先生のアドバイスは凄いですね。
しかも、僕がすうすう寝ていた間に伊織くんと玄くんが仲良くなっていました。
2人で話し合いをしたらしく、伊織くんの持っていた合鍵を玄くんが持つことになったんですよ。僕としてはシルヴァニアさん付きの鍵を渡したかったんですが、伊織くんと玄くん二人がかりでむやみに他人に鍵をしかもマスターキーを預けてはダメと、説得されてしまいました。
玄くんなら悪用するはずありませんし、帰る時と朝登校する時に玄くんに寮のお部屋に寄って鍵をかけてもらえたら、少しでも長く一緒にいられるかもしれないと悪だくみしてたんですが。そんな僕の浅い考えはあっさりと打ち砕かれました。
朝、寝室クローゼットの鏡前で、もそもそネクタイを縛っていると、インターホンが鳴ります。モニターにはカバンが肩からずり落ち少しだけ眠そうな玄くんです。モニター越しでもその気怠げな雰囲気がかっこいいです。こんなかっこいい人が僕のことを好きになってくれたなんて奇跡ですよね。なんだか胸がそわそわうずうず落ち着かなくなってきました。でも、モニターに映る大好きな人の無防備な姿に目が離せません。
モニター越しの玄くんに見惚れ、ぽやんとしていると玄関から小さな電子音が。次いで玄関扉が開く音と玄くんの声です。迎えに来た玄くんと支度をし、2人一緒に玄関から出ます。
俺が鍵かけていい?と昨日僕があげた合鍵を顔の前で揺らし、玄くんが聞きます。頷く僕へはにかんだ玄くんに胸がぎゅっと絞られます。
「いくか」そう言うと同時に当たり前のように差し出される大きな手。恋人同士なら手を繋いで登校するのは当たり前ですもんね。恋人同士という言葉に、顔が熱くなります。僕も玄くんが好きで、玄くんも僕が好き。今さらながらに実感が湧き、じわりと胸の奥が熱くなります。おずおずと手を出すと、玄くんは澄ましたお顔で平然と指を絡めてきます。その瞬間、甘い痺れが繋いだ指先からびりびりと身体中を這い巡り腰が砕けました。
「ぎゃん?!」
へなへなと床に成すすべ無くへたり込む僕です。玄くんは驚いたようで目を丸くし、固まっています。
「す、すい?! 嫌だったか?」
ぱっと手を離すと床に膝をつき、顔を傾げ覗き込む玄くん。
「いえっ! あの、玄くんのこと好きだなあと思って、手を繋いだら幸せ過ぎてびりびりと痺れて……大好きな人と恋人になるってすごいです……」
「ぐふぅ! 俺も今、びりびり来た」
玄くんも胸を押さえて苦しそうです。崩れるように玄くんも、床にへたり込んでしまいました。何故か玄くんが僕を物言いたげにじっとみつめてきます。
「なぁ。恋人になった俺と翠がキスしたらどうなっちゃうんだろうな」
確かに。手を繋ぐだけで痺れて動けなくなったくらいです。昨日の頬へのキスが鮮明に蘇ります。柔らかな感触すらはっきりと思い出してしまいます。
「幸せすぎて……溶けちゃいますよぉ」
思い出した幸せの記憶に浸ったままそう漏らせば、昨日と同じ柔らかくて気持ちいい感触が頬へ。
「ひゃあ!!」
遅れて、玄くんが頬へちゅっと軽くキスを落としたと気づきます。片頬を押さえ、パクパクと口を空いたり閉じたりしかできない僕です。
玄くんは顔を寄せたまま、とん、と指先で唇へ触れます。
「……我慢、できねーんだけど。いい?」
端正な眉を下げ、縋るように掠れた囁き声で尋ねられます。何を、とは聞かなくても唇に残る熱がわからせます。触れた指先はカサついて、微かに震えていました。
⸺可愛い
胸を満たす愛おしさに思わず鼻へ唇を寄せます。
「……鍵使いましょう?」
期待に息を震わせながら言います。息を呑んだ玄くんは漆黒の瞳で静かに僕を見つめます。瞳の奥の甘さを孕んだ熱をぐっと深めると、ゆっくり頷きます。甘い熱に捕らえられてしまった僕は玄くんの首へしがみつき視線で部屋を示します。
抱き上げられて部屋へ入るとすぐに気だるげな美貌がゆっくりと近づいてきます。ゆらんと揺れるピアスやお揃いの目元のほくろが焦点も合わずボヤけるほど。もう心臓が破裂寸前くらい痛くて、ぎゅっと目を瞑ります。玄くんが小さく笑い唇を吐息が撫でます。またまたその熱や感触に心臓が悲鳴を上げ跳ね上がります。唇へふわりと柔らかなものが重なります。そうっと、とても軽く重なっただけ。でも甘い熱に心まで一緒に溶け合ったような気持ちよさでした。
「……好きだ。翠がいないと生きていけないくらい」
ほんのり赤く色づく目元を蕩けたようにふわりとたわませる玄くん。
大好きな優しい笑顔に好きがとぷんとぷん溢れ出てきます。とめどなく押し寄せる愛しさに溺れそうです。
「僕も玄くんとずっと一緒にいたいです」
ぐっと首を伸ばし、僕から唇をそっと重ねます。一瞬だけですが。
呆然と僕を見つめる漆黒の瞳は、だんだんと目尻を下げふんわり包み込むように優しく笑います。目が眩みそうなほど屈託のない笑顔です。
可愛い。ぽんっと心の中に新たな甘酸っぱい気持ちが生まれます。このわがままな気持ちも目の前で笑う厳しくも優しいあなたなら、きっと大切にしてくれる。そう信じられます。
脆く弱っちい僕をまるごと、取り返しがつかないくらいからっぽになるまで差し出せるくらい、好きだから。
実は誰よりも可愛い玄くんを可愛がりたいです。ずっと。
しかも、僕がすうすう寝ていた間に伊織くんと玄くんが仲良くなっていました。
2人で話し合いをしたらしく、伊織くんの持っていた合鍵を玄くんが持つことになったんですよ。僕としてはシルヴァニアさん付きの鍵を渡したかったんですが、伊織くんと玄くん二人がかりでむやみに他人に鍵をしかもマスターキーを預けてはダメと、説得されてしまいました。
玄くんなら悪用するはずありませんし、帰る時と朝登校する時に玄くんに寮のお部屋に寄って鍵をかけてもらえたら、少しでも長く一緒にいられるかもしれないと悪だくみしてたんですが。そんな僕の浅い考えはあっさりと打ち砕かれました。
朝、寝室クローゼットの鏡前で、もそもそネクタイを縛っていると、インターホンが鳴ります。モニターにはカバンが肩からずり落ち少しだけ眠そうな玄くんです。モニター越しでもその気怠げな雰囲気がかっこいいです。こんなかっこいい人が僕のことを好きになってくれたなんて奇跡ですよね。なんだか胸がそわそわうずうず落ち着かなくなってきました。でも、モニターに映る大好きな人の無防備な姿に目が離せません。
モニター越しの玄くんに見惚れ、ぽやんとしていると玄関から小さな電子音が。次いで玄関扉が開く音と玄くんの声です。迎えに来た玄くんと支度をし、2人一緒に玄関から出ます。
俺が鍵かけていい?と昨日僕があげた合鍵を顔の前で揺らし、玄くんが聞きます。頷く僕へはにかんだ玄くんに胸がぎゅっと絞られます。
「いくか」そう言うと同時に当たり前のように差し出される大きな手。恋人同士なら手を繋いで登校するのは当たり前ですもんね。恋人同士という言葉に、顔が熱くなります。僕も玄くんが好きで、玄くんも僕が好き。今さらながらに実感が湧き、じわりと胸の奥が熱くなります。おずおずと手を出すと、玄くんは澄ましたお顔で平然と指を絡めてきます。その瞬間、甘い痺れが繋いだ指先からびりびりと身体中を這い巡り腰が砕けました。
「ぎゃん?!」
へなへなと床に成すすべ無くへたり込む僕です。玄くんは驚いたようで目を丸くし、固まっています。
「す、すい?! 嫌だったか?」
ぱっと手を離すと床に膝をつき、顔を傾げ覗き込む玄くん。
「いえっ! あの、玄くんのこと好きだなあと思って、手を繋いだら幸せ過ぎてびりびりと痺れて……大好きな人と恋人になるってすごいです……」
「ぐふぅ! 俺も今、びりびり来た」
玄くんも胸を押さえて苦しそうです。崩れるように玄くんも、床にへたり込んでしまいました。何故か玄くんが僕を物言いたげにじっとみつめてきます。
「なぁ。恋人になった俺と翠がキスしたらどうなっちゃうんだろうな」
確かに。手を繋ぐだけで痺れて動けなくなったくらいです。昨日の頬へのキスが鮮明に蘇ります。柔らかな感触すらはっきりと思い出してしまいます。
「幸せすぎて……溶けちゃいますよぉ」
思い出した幸せの記憶に浸ったままそう漏らせば、昨日と同じ柔らかくて気持ちいい感触が頬へ。
「ひゃあ!!」
遅れて、玄くんが頬へちゅっと軽くキスを落としたと気づきます。片頬を押さえ、パクパクと口を空いたり閉じたりしかできない僕です。
玄くんは顔を寄せたまま、とん、と指先で唇へ触れます。
「……我慢、できねーんだけど。いい?」
端正な眉を下げ、縋るように掠れた囁き声で尋ねられます。何を、とは聞かなくても唇に残る熱がわからせます。触れた指先はカサついて、微かに震えていました。
⸺可愛い
胸を満たす愛おしさに思わず鼻へ唇を寄せます。
「……鍵使いましょう?」
期待に息を震わせながら言います。息を呑んだ玄くんは漆黒の瞳で静かに僕を見つめます。瞳の奥の甘さを孕んだ熱をぐっと深めると、ゆっくり頷きます。甘い熱に捕らえられてしまった僕は玄くんの首へしがみつき視線で部屋を示します。
抱き上げられて部屋へ入るとすぐに気だるげな美貌がゆっくりと近づいてきます。ゆらんと揺れるピアスやお揃いの目元のほくろが焦点も合わずボヤけるほど。もう心臓が破裂寸前くらい痛くて、ぎゅっと目を瞑ります。玄くんが小さく笑い唇を吐息が撫でます。またまたその熱や感触に心臓が悲鳴を上げ跳ね上がります。唇へふわりと柔らかなものが重なります。そうっと、とても軽く重なっただけ。でも甘い熱に心まで一緒に溶け合ったような気持ちよさでした。
「……好きだ。翠がいないと生きていけないくらい」
ほんのり赤く色づく目元を蕩けたようにふわりとたわませる玄くん。
大好きな優しい笑顔に好きがとぷんとぷん溢れ出てきます。とめどなく押し寄せる愛しさに溺れそうです。
「僕も玄くんとずっと一緒にいたいです」
ぐっと首を伸ばし、僕から唇をそっと重ねます。一瞬だけですが。
呆然と僕を見つめる漆黒の瞳は、だんだんと目尻を下げふんわり包み込むように優しく笑います。目が眩みそうなほど屈託のない笑顔です。
可愛い。ぽんっと心の中に新たな甘酸っぱい気持ちが生まれます。このわがままな気持ちも目の前で笑う厳しくも優しいあなたなら、きっと大切にしてくれる。そう信じられます。
脆く弱っちい僕をまるごと、取り返しがつかないくらいからっぽになるまで差し出せるくらい、好きだから。
実は誰よりも可愛い玄くんを可愛がりたいです。ずっと。