[十六話]
二人で、また駅までぽつりぽつりと歩き出す。自分から、自分の地元を見ていきたい!と言ったのは良いものの楽しさよりも息苦しさの方が大きく出てしまって想像以上に精神、身体共に疲れた。
佐藤と話す気力すらも無くて、行きとはかけ離れた静けさが二人の間に流れる。何か話そうと考えていても、言葉は何も出てこない。
「……三浦?大丈夫か?」
佐藤がうちの顔を覗き込む。
「え?」
素っ頓狂な声がうちの口から飛び出した。何を心配してくれているのだろうか。
「さっき、凄い苦しそうだった」
そんなに顔に出てしまっていたのか。平然と何もない顔で隠していたと思っていたのに。
自分でもわかっていなかったし、皆だって気付いていなかった。なのに何でそんな事わかるんだろう。うちの事をそんなに見てくれているのかとちょっと自惚れてしまう。
でも直ぐに首を振って、そんな甘えた考えを捨てる。
うちは『うん、さっき苦しかったの』なんて素直になれるような人じゃない。
「そんな事ない、って」
必死に声を絞り出すものの、声は掠れて途切れ途切れになる。何かを言おうとしていた佐藤は、複雑そうな顔で黙った。心配してくれたというのにうちは最低だ。素直になれない上に、より一層気まずい空気にしてしまった。
はぁ、と溢れ出た溜息が白く変わる。
「というか、手から血出てない?」
佐藤は「俺の気の所為か?」と続ける。
「え? あ、出てるよ」
そうだった、さっき強く手を握りしめすぎた所為で掌を切ってしまったんだ。さっきからずっとヒリヒリ痛みは続いていたのに、つい血が出ていることすら忘れて放っておいてしまった。
「いや、何でそんな冷静なんだよ」
「そんな焦ることでもなくない?」
ガバッと急に佐藤に手を掴まれて、身体が強張る。
「ん〜、取り敢えずは駅が近いし。駅で手当てするぞ」
「え?そんな、良いって」
「いやいや、駄目だろ」
佐藤は真っ直ぐにうちを見て、放っておいたら炎症起こすかもしれないからと自分の意見を押し通した。
「水道水で手洗ってこい」と背中を押されてうちは仕方なく言われた通りに手を洗いに行く。この駅はもう、夜になるとほぼ誰も使わない。だから、佐藤は誰も居ないスカスカな駅の改札近くにあるベンチに深く腰掛けてうちを待っていた。
うちがベンチまで戻ってくると、佐藤は直ぐに少ない荷物の中から絆創膏を取り出した。
「ほら、傷口に貼って……これで大丈夫だな」
うちは、耐え切れずにふっと吹き出してしまった。普通に鞄の中から絆創膏が出てくるのも凄いし、ゆるっとした可愛い動物が描かれているのを選んでいると考えると、ちょっと可愛い。
的確に、しっかり指示をしてくるのはちょっと過保護なような気もするけど。
ツボにハマってしまって、うちは笑うのを止められずにいた。
「何笑ってるんだよ」
呆れた視線を佐藤に送られてもまだ、うちは笑いを止められない。中々こんなにも大笑いすることは無いから、一度笑いだすと暫く止められなくなるのだ。
佐藤は学校ではいつもクールの仮面を被っていて、群れるのを嫌っているような一匹狼で。誰か特定の人と深い仲があるのは一度も見たことがない。
他人に興味はありませんと、勝手に深く踏み込んでこないで下さいと。佐藤の表情からはそう読み取れた。
でも、それは勘違いだった。ただの偏見でしか無かったんだ。実際佐藤は普通の男子と変わらないんだ。
大分仲は深まっていたと思ったのに、うちは佐藤の事を全然知らないんだとわからされる。
「いや、だって……意外な一面だなって」
ようやく、笑いが収まってきた。佐藤は「あぁ、絆創膏持ち歩いてること?」とうちに聞いた。それだけじゃ無いけど、佐藤が話し続けるみたいだから、うちは言葉を飲み込んだ。
「妹が直ぐ転けたり、怪我しそうになるから……危なっかしくて心配で。そしたら普段から持ち歩く癖がついたんだよ」
「えっ、妹さん居たの⁉︎」
うちは、つい驚いて佐藤の顔を覗き込んだ。「年の離れた妹と、兄がいます」と優しく笑う佐藤の顔から家族を大事に思ってるんだなぁと伝わる。
「言った気がするんだけど、言ってなかったっけ?」
「聞いてない、初めて知った」
うちは、佐藤の妹さんとお兄さんがどんな人なのか気になった。だから、食い気味に返してしまった。
その気持ちが伝わったのか、佐藤は「そんなに俺の家族気になる?」とうちに聞いてきた。
「うん、佐藤の家族ってどういう人なのかなーって」
うちがそういうと、佐藤は少し考え込んで静かに口を開けた。
「……俺の家は、母と父。そして妹と俺と兄の五人家族。母はちょっとグイグイ来る明るい人かな。父は割と静かめなほうで。妹はめっちゃ可愛くて、兄はちょっと要素がありすぎて説明が難しい」
「個性豊かな家族なんだ」
皆、きっと佐藤のように優しいのだろう。良いなぁ、うちはつい「楽しそう」と本音を溢してしまった。ハッと口に出してしまった事に気付いて、うちは内心焦り始めた。
でも、幸い呟いただけだから佐藤には聞こえなかったみたいだ。
「三浦は?」
佐藤が「三浦の家族はどんな感じ?」とうちに聞いてきた。
うちは、ひゅっと息を呑む。聞き返される事なんて想定してなかった。うちから聞き始めたんだから、聞き返されるのも仕方がない。
早く、早くちゃんと答えなきゃ。答えないと変に思われる。
こんな事くらいで、柚凪の事を思い出したくらいで辛くなってたらキリがない。もううちはしっかり立ち直ったんだ。お母さんとは、柚凪とはもう会えない。いや、会わないんだ。だから、辛くなんかない。
ずっと自分に何度も言い聞かせてきた言葉を、脳内で反芻させる。
「柚凪って言う名前の双子の姉と、お父さんとお母さんの四人家族……だった」
頑張って口を開くとあとは勝手に自然と、するりと出てきた。
「だった、って……もしかして」
「うん。両親が、うちと柚凪が中二の時に離婚したんだ。柚凪はお母さんに、うちはお父さんに引き取られる事になったの」
「……ごめん、無神経だった」
佐藤は、申し訳なさそうに俯いた。またうちは、そんなに余裕の無い顔をしているのだろうか。苦しそうに見えてしまったんだろうか。
別に、これはうちの問題であって佐藤が謝るような事じゃ無いのに。
「全然、もう吹っ切れたから大丈夫だよ」
本当は大丈夫なんかじゃないのに、苦しくて辛いのにうちの口から出てくるのは大丈夫だとか平気だとかで嫌になる。誰かに心配をかけてしまうのが嫌で、怖いから覚えた処世術。
誰にも素直になれないこんな自分が、平気で嘘をつける自分が嫌いで、でもそんな自分が居たからこそ今まで本心を隠し通せてきた。だからもう素直で在るなんて事は無理だと諦めた。
「嘘だ」
ハッキリとした、澄んだ佐藤の声がうちの耳に入ってきた。心から『そんなの嘘だろう』と思っているような言い振りに、うちはドキッとさせられる。
そんな事ないよと言い訳をしようとしたけど、佐藤はそのままハキハキと自分の意見を告げる。
「俺だったら、家族と引き離されたら平気じゃ居られない。三浦だって本当は、四人で暮らしてたかったんじゃ無いのか?」
「そんな事……」
無いとまでは言えなかった。うちの本能が必死に言わないように堪えていた。
柚凪と会いたい、仲直りをしたい。お母さんと、お父さんと、柚凪とうちの四人でまた暮らしたい。両親がどんなに遅く帰ってきても、定期的にコミュニケーションが取れなくても良い。離れたく無かった。
本当は、心の奥底では自分がそう思っている事くらい分かってた。うちがその奥底にある誰にも言えない願望に、気付きたく無くて気付かない振りをしていただけ。
だってそんな事を口に出したってどうにかならないじゃないか。ずっと、うちは誰からも心配されないように頑張ってきたんだ。皆の前で、自分の前で偽って、偽って、偽り続けた。
それは、皆の為と称した自分の為だった。深い関係を持ってしまうと、失った時にどれほど辛いかを知っていたから。もうあの辛さを感じたく無くてうちは無意識に硬くて、冷たい壁を自分と周りの間に建てていたんだ。
「もし、三浦が言いたく無いなら無理に聞かないけど……もしも一人で抱え切れないなら俺に愚痴でも何でも良いから吐け」
佐藤にそう言われた途端ブワッと感情が昂って、堰を切ったように涙が溢れ出した。
「本当はっ、ずっと四人で居たかったのにっ」
佐藤はうんうんと相槌をつきながら、うちの背中を撫でてくれる。うちを落ち着かせようとしてくれているのかもしれない。佐藤の優しさを強く感じる。
あれから誰にも頼れずに、一人で頑張ってきたから撫でられるのも何年振りかというくらいで。優しく話を聞いてくれる佐藤には、全てを話せるような気までしてきた。
両親がそれで幸せなら受け入れると決めた事、それでも本当は離れたく無かった事。柚凪と離れる前に喧嘩をしてしまって、離れてから一度も連絡を取っていない事。深く関わりを持つのも人を頼るのも怖くなって、一人で何もかも頑張ってきた事。
泣きじゃくりながら吐き出しているうちの声は、決して聞きやすいものとは言えなかっただろうと思う。話の内容も重いもので、うちの意見は我儘でしかなかった。
それでも批判しないで、うちを受け入れてくれる佐藤に救われた。
二人で、また駅までぽつりぽつりと歩き出す。自分から、自分の地元を見ていきたい!と言ったのは良いものの楽しさよりも息苦しさの方が大きく出てしまって想像以上に精神、身体共に疲れた。
佐藤と話す気力すらも無くて、行きとはかけ離れた静けさが二人の間に流れる。何か話そうと考えていても、言葉は何も出てこない。
「……三浦?大丈夫か?」
佐藤がうちの顔を覗き込む。
「え?」
素っ頓狂な声がうちの口から飛び出した。何を心配してくれているのだろうか。
「さっき、凄い苦しそうだった」
そんなに顔に出てしまっていたのか。平然と何もない顔で隠していたと思っていたのに。
自分でもわかっていなかったし、皆だって気付いていなかった。なのに何でそんな事わかるんだろう。うちの事をそんなに見てくれているのかとちょっと自惚れてしまう。
でも直ぐに首を振って、そんな甘えた考えを捨てる。
うちは『うん、さっき苦しかったの』なんて素直になれるような人じゃない。
「そんな事ない、って」
必死に声を絞り出すものの、声は掠れて途切れ途切れになる。何かを言おうとしていた佐藤は、複雑そうな顔で黙った。心配してくれたというのにうちは最低だ。素直になれない上に、より一層気まずい空気にしてしまった。
はぁ、と溢れ出た溜息が白く変わる。
「というか、手から血出てない?」
佐藤は「俺の気の所為か?」と続ける。
「え? あ、出てるよ」
そうだった、さっき強く手を握りしめすぎた所為で掌を切ってしまったんだ。さっきからずっとヒリヒリ痛みは続いていたのに、つい血が出ていることすら忘れて放っておいてしまった。
「いや、何でそんな冷静なんだよ」
「そんな焦ることでもなくない?」
ガバッと急に佐藤に手を掴まれて、身体が強張る。
「ん〜、取り敢えずは駅が近いし。駅で手当てするぞ」
「え?そんな、良いって」
「いやいや、駄目だろ」
佐藤は真っ直ぐにうちを見て、放っておいたら炎症起こすかもしれないからと自分の意見を押し通した。
「水道水で手洗ってこい」と背中を押されてうちは仕方なく言われた通りに手を洗いに行く。この駅はもう、夜になるとほぼ誰も使わない。だから、佐藤は誰も居ないスカスカな駅の改札近くにあるベンチに深く腰掛けてうちを待っていた。
うちがベンチまで戻ってくると、佐藤は直ぐに少ない荷物の中から絆創膏を取り出した。
「ほら、傷口に貼って……これで大丈夫だな」
うちは、耐え切れずにふっと吹き出してしまった。普通に鞄の中から絆創膏が出てくるのも凄いし、ゆるっとした可愛い動物が描かれているのを選んでいると考えると、ちょっと可愛い。
的確に、しっかり指示をしてくるのはちょっと過保護なような気もするけど。
ツボにハマってしまって、うちは笑うのを止められずにいた。
「何笑ってるんだよ」
呆れた視線を佐藤に送られてもまだ、うちは笑いを止められない。中々こんなにも大笑いすることは無いから、一度笑いだすと暫く止められなくなるのだ。
佐藤は学校ではいつもクールの仮面を被っていて、群れるのを嫌っているような一匹狼で。誰か特定の人と深い仲があるのは一度も見たことがない。
他人に興味はありませんと、勝手に深く踏み込んでこないで下さいと。佐藤の表情からはそう読み取れた。
でも、それは勘違いだった。ただの偏見でしか無かったんだ。実際佐藤は普通の男子と変わらないんだ。
大分仲は深まっていたと思ったのに、うちは佐藤の事を全然知らないんだとわからされる。
「いや、だって……意外な一面だなって」
ようやく、笑いが収まってきた。佐藤は「あぁ、絆創膏持ち歩いてること?」とうちに聞いた。それだけじゃ無いけど、佐藤が話し続けるみたいだから、うちは言葉を飲み込んだ。
「妹が直ぐ転けたり、怪我しそうになるから……危なっかしくて心配で。そしたら普段から持ち歩く癖がついたんだよ」
「えっ、妹さん居たの⁉︎」
うちは、つい驚いて佐藤の顔を覗き込んだ。「年の離れた妹と、兄がいます」と優しく笑う佐藤の顔から家族を大事に思ってるんだなぁと伝わる。
「言った気がするんだけど、言ってなかったっけ?」
「聞いてない、初めて知った」
うちは、佐藤の妹さんとお兄さんがどんな人なのか気になった。だから、食い気味に返してしまった。
その気持ちが伝わったのか、佐藤は「そんなに俺の家族気になる?」とうちに聞いてきた。
「うん、佐藤の家族ってどういう人なのかなーって」
うちがそういうと、佐藤は少し考え込んで静かに口を開けた。
「……俺の家は、母と父。そして妹と俺と兄の五人家族。母はちょっとグイグイ来る明るい人かな。父は割と静かめなほうで。妹はめっちゃ可愛くて、兄はちょっと要素がありすぎて説明が難しい」
「個性豊かな家族なんだ」
皆、きっと佐藤のように優しいのだろう。良いなぁ、うちはつい「楽しそう」と本音を溢してしまった。ハッと口に出してしまった事に気付いて、うちは内心焦り始めた。
でも、幸い呟いただけだから佐藤には聞こえなかったみたいだ。
「三浦は?」
佐藤が「三浦の家族はどんな感じ?」とうちに聞いてきた。
うちは、ひゅっと息を呑む。聞き返される事なんて想定してなかった。うちから聞き始めたんだから、聞き返されるのも仕方がない。
早く、早くちゃんと答えなきゃ。答えないと変に思われる。
こんな事くらいで、柚凪の事を思い出したくらいで辛くなってたらキリがない。もううちはしっかり立ち直ったんだ。お母さんとは、柚凪とはもう会えない。いや、会わないんだ。だから、辛くなんかない。
ずっと自分に何度も言い聞かせてきた言葉を、脳内で反芻させる。
「柚凪って言う名前の双子の姉と、お父さんとお母さんの四人家族……だった」
頑張って口を開くとあとは勝手に自然と、するりと出てきた。
「だった、って……もしかして」
「うん。両親が、うちと柚凪が中二の時に離婚したんだ。柚凪はお母さんに、うちはお父さんに引き取られる事になったの」
「……ごめん、無神経だった」
佐藤は、申し訳なさそうに俯いた。またうちは、そんなに余裕の無い顔をしているのだろうか。苦しそうに見えてしまったんだろうか。
別に、これはうちの問題であって佐藤が謝るような事じゃ無いのに。
「全然、もう吹っ切れたから大丈夫だよ」
本当は大丈夫なんかじゃないのに、苦しくて辛いのにうちの口から出てくるのは大丈夫だとか平気だとかで嫌になる。誰かに心配をかけてしまうのが嫌で、怖いから覚えた処世術。
誰にも素直になれないこんな自分が、平気で嘘をつける自分が嫌いで、でもそんな自分が居たからこそ今まで本心を隠し通せてきた。だからもう素直で在るなんて事は無理だと諦めた。
「嘘だ」
ハッキリとした、澄んだ佐藤の声がうちの耳に入ってきた。心から『そんなの嘘だろう』と思っているような言い振りに、うちはドキッとさせられる。
そんな事ないよと言い訳をしようとしたけど、佐藤はそのままハキハキと自分の意見を告げる。
「俺だったら、家族と引き離されたら平気じゃ居られない。三浦だって本当は、四人で暮らしてたかったんじゃ無いのか?」
「そんな事……」
無いとまでは言えなかった。うちの本能が必死に言わないように堪えていた。
柚凪と会いたい、仲直りをしたい。お母さんと、お父さんと、柚凪とうちの四人でまた暮らしたい。両親がどんなに遅く帰ってきても、定期的にコミュニケーションが取れなくても良い。離れたく無かった。
本当は、心の奥底では自分がそう思っている事くらい分かってた。うちがその奥底にある誰にも言えない願望に、気付きたく無くて気付かない振りをしていただけ。
だってそんな事を口に出したってどうにかならないじゃないか。ずっと、うちは誰からも心配されないように頑張ってきたんだ。皆の前で、自分の前で偽って、偽って、偽り続けた。
それは、皆の為と称した自分の為だった。深い関係を持ってしまうと、失った時にどれほど辛いかを知っていたから。もうあの辛さを感じたく無くてうちは無意識に硬くて、冷たい壁を自分と周りの間に建てていたんだ。
「もし、三浦が言いたく無いなら無理に聞かないけど……もしも一人で抱え切れないなら俺に愚痴でも何でも良いから吐け」
佐藤にそう言われた途端ブワッと感情が昂って、堰を切ったように涙が溢れ出した。
「本当はっ、ずっと四人で居たかったのにっ」
佐藤はうんうんと相槌をつきながら、うちの背中を撫でてくれる。うちを落ち着かせようとしてくれているのかもしれない。佐藤の優しさを強く感じる。
あれから誰にも頼れずに、一人で頑張ってきたから撫でられるのも何年振りかというくらいで。優しく話を聞いてくれる佐藤には、全てを話せるような気までしてきた。
両親がそれで幸せなら受け入れると決めた事、それでも本当は離れたく無かった事。柚凪と離れる前に喧嘩をしてしまって、離れてから一度も連絡を取っていない事。深く関わりを持つのも人を頼るのも怖くなって、一人で何もかも頑張ってきた事。
泣きじゃくりながら吐き出しているうちの声は、決して聞きやすいものとは言えなかっただろうと思う。話の内容も重いもので、うちの意見は我儘でしかなかった。
それでも批判しないで、うちを受け入れてくれる佐藤に救われた。