「我らが女王のお言葉を伝える。クニを揺るがす重大なお言葉ゆえ、心して聞くように」
重大である事くらい疾うにわかっているわい、都心牛利は心の中でそう呟き、大人達に合わせてさらに深く頭を下げた。
一斉に静まり返り、誰かの息を呑む音が僅かに聞こえる。
「女王は今朝、神の啓示を受け後継者をお選びになった。邪馬台国の次代の王である。今後は女王卑弥呼とその後継者が神の声を聞き、邪馬台国の未来をお導きくださるであろう」
大人達は驚きの顔を隠せず、つい声を発してしまう者もいた。
特にムラ長である賀舎は目と口を大きく開き、牟須比は表情に出さないものの眉を僅かに動かした。
「乙彦様、よろしいでしょうか」
案の定、賀舎が乙彦に発言の許可を申し出た。
「よかろう、其方の疑問は承知しておる」
「さすれば・・・・王位を継がれる方は、誰方でございましょう?」
「今はまだ明らかにしないとの仰せである。男か女か、巫女であるかも伏せる。いずれ来るべき時に明らかになるであろう」
賀舎は戸惑いを隠せずも、一旦は承知し礼を述べる。
「そしてこの度、後継者は神の啓示を受けられた。狗奴国の不穏な動きに対する、邪馬台国の抗ずるべき策についてである」
従者が物々しい供物台を掲げ、乙彦の前に献上する。
供物台の上には動物の骨が供えられており、焼け焦げた跡が見られる。
女王の後継者が政を占った際、太占で使われた動物の骨である。
その骨を証拠として大人達に見せつけ、神の真の啓示であることを知らしめる。
「狗奴国は軍事力の増強の為、呉の国に遣使を送り皇帝の信頼を得た。我々も同じく大陸を治める皇帝の信頼を得、後ろ盾の大きさを見せるべきである。よって外交大使・難斗米らを派遣し、盟約を結ぶことと相なった」
突然外交大使の名を呼ばれ、都心牛利は大きく目を見開く。
難斗米は落ち着きを払い、「ははっ!」と返事をして再度頭を下げる。
自分たちがここに呼ばれた理由が判明し、素直に合点がいく。
「難斗米よ。すぐに遣使を選び集め、貢物を皇帝に献上するのだ。邪馬台国が盟約を結ぶのは・・・・魏である!」

