その日の夜、太市と京平はとある場所に向かった。
憲明から招待を受けていた、現代からのタイムスリッパー達の集まりである。
彼らが集まっていることは極秘であり、誰にも漏れないように最新の注意を払うようにと強く注意されていた。
「今晩の月が真上に昇る頃、普請工事中の丸太橋に来てください。そこから僕が案内します」
憲明がそう言った通り、昼間に懸命に拵えた丸太橋の前で太市と京平は待った。
間も無くして頭上を見上げると、十三夜の月が南中し待ち合わせ時刻となった。
約束通りに憲明が丸太橋に姿を現した。もう一人同じ背格好の男を連れている。
「約束通り来てくれて嬉しいです。コイツは僕の大学の同期で、藤本 修斗です。話し声で誰かに気づかれると厄介なので、着くまではなるべく無言でお願いします」
と、憲明が小声で説明し、修斗という男子も会釈のみで挨拶を終えた。
無言で憲明達の背中についていき、ムラ人と鉢合わせないか最新の注意を払いながら、川を渡り林道を潜り抜け、岩壁に作られた洞窟に差し掛かった。
屈みながら洞窟の中を進むと、徐々に篝火の灯りが見えてきて、複数人の言い合いの声も聞こえてくる。
そこに集まっていたのは、およそ10人ほどの男女で年齢も様々。
その内の男性達は、そのほとんどが川の普請工事を共にしている奴婢だった。
白い髭の男を中心として輪を作り、何やら議論をしているようだ。
太市の目には、彼らは明確に青白い光を放っていた。現代からタイムスリップしてきた者達であることを太市は確信した。
「ようこそ、待っていたよ」
中心にいた白髭の男が、和やかな笑みで太市と京平を迎える。
人々は一斉に振り返り、二人を輪の中心に誘導する。
彼らは微笑み、新たに加わる仲間を歓迎の念で見つめる。
「突然お誘いして、驚かせてしまったことでしょう。私たちは仲間です。そうやって睨みつけて警戒しなくても大丈夫ですよ。まるで狼の群れに紛れ込んだ子犬のようだ」
と、白髭の男は京平に語りかけた。
確かに京平は、人々を見定めるように鋭い目つきで警戒している。
白髭の男の比喩に気を悪くしたのか、京平の目つきはさらに鋭くなる。
「あは、すみません!人見知りが酷いタイプで初対面の人には皆こうなんですよ。温かい目で友達を見守ってやってください」
と、太市がフォローする。

