いつの時代も必ず君に逢いにいく 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




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「はぁ・・・・怖かった」

二人が呼び出されたのは、外交大使の仕事部屋だった。
難斗米と都心牛利が日頃の職務を行っている場所である。
ここでは難斗米の許可の下、自由に話すことが出来る。
大きなため息も、兵士達に対する愚痴も吐き出せるのだ。

太市が兵士に暴行を受けた事を報告すると、難斗米は血相を変えて直ぐに直属の侍女を呼びつけ、背中の怪我の処置をさせた。

「兵士が手を挙げたとは、何ともお労しい!我が女王の客人でありながら、このようなことは許される行為ではありません!」
と、都心牛利は怒りを露わにする。
「まあ、正確には棒で殴られたんだけど」
「何と!棒で?もっと酷い!あってはならないことですな!」
「・・・・いや、それよりも気になるのは、 "女王の客人” である俺達がどうして川の普請工事なんかさせられてるのか、だけど?」

京平が鋭く質問をすると、先ほどまで威勢の良かった都心牛利は口を黙み、視線を彷徨わせる。

「それにつきましては、申し訳ないとしか言いようがなく」
と、難斗米は頭を低くする。

難斗米と都心牛利は帰国後、女王の客人として連れてきた五人の思わぬ処遇について探りを入れていた。
もとはと言えば去る秋の赤い月の夜、女王がお告げを受けたと大人達の詮議にて発表があり、客人を連れてくるよう命令が下された。
女王からすれば首を長くして待っていたはずだが、その女王からの沙汰は帰国以降全く無い。
それどころか、詮議に参加していたはずのムラ長をはじめとする大人達は、口を揃えて『そのような事は無かった』と話すのである。
このような事態に、客人として連れられてきた四人は勿論のこと、わざわざ奴国まで往復し旅の手配をした難斗米と都心牛利も困惑していた。

「女王様本人に聞かないと、真実はわからないんじゃないか?」
太市はそう尋ねるも、都心牛利は激しく首を横に振る。

「そのような恐れ多い事、到底出来ません!我が女王に直にお会いできるのは、この邪馬台国でただ一人、乙彦様のみ」
「オトヒコ様?」
「女王の唯一の弟君にあらせられます」
「え?じゃあ、女王様からの命令を直接聞いているのは、乙彦様だけってこと?」
「左様。乙彦様が女王の命を聞き、それを大人達の詮議に持ち込まれ、万民に伝えておられるのです」
「なら、ソイツが嘘をついていたとしても誰も気付けないって事か」

京平の鋭い切り込みに、都心牛利は禁句だとばかりに震え上がる。

「俺たちのこと、ソイツは何て言ってるんだ?」
「残念ながら、まだ乙彦様へのお目通りは叶っておりません。彼の方も我が女王程ではありませんが、常にお会いできるような立場ではございませんからな」
難斗米の眉はハの字に下がる。

「今回の食い違いの原因は、考えられる事は二つだ。女王が嘘をついているか、別の誰かが嘘をついているか」
「まさか!我が女王を侮辱するような事は、たとえ女王の客人であろうとも許されませぬ!」
「なら話は簡単だ。別の誰かが嘘をついている、ということでいいな?」
「うぅ、それは・・・・」
都心牛利は再び口篭る。

「まずはその乙彦様ってやつと直接話すしか無い。難斗米さんとゴリさんには、一刻も早く面会出来るよう、もう少し尽力をお願いしたい。俺と太市も一緒に同席させて欲しいが、可能な限りで構わない」
「仰せのままに」

難斗米は深く頭を下げる。
ただ首を縦に振るのではなく、力を尽くすという誠意が表れているように見えた。
都心牛利もそれを見て、慌てて頭を同じ低さに持っていった。