いつの時代も必ず君に逢いにいく 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




「・・・・話が違うんですけど?」
と歌織は怒りを露わにする。
「卑弥呼様から招待されたと聞いていたのは、嘘だったんですか?」
と伊代は戸惑いながら難斗米に尋ねる。

「いえいえ、嘘ではございませぬ。女王はなぜか、このようなことをご命令されたのです」
と都心牛利は開き直ったように告げる。

「ゴリさん、正直に言ってください。俺たちのことを "客人” だとか体の良い呼び方をしておいて、騙していたんですか?」
と、太市が真正面から尋ねる。
「騙すなどと、とんでもないことにございまする!すべては女王の思し召し通りにしているまでのこと。どうかご理解いただきますよう・・・・」

都心牛利には何を言っても、同じような返答しかしない。
自らもなぜこの四人が女王の命によって邪馬台国に連れてこられたのか、わかっていないようだった。

難斗米は深々と頭を下げる。
「何と申し上げて良いか・・・・遥々足を運んでいただいたのに、このような形になってしまい申し訳ありませぬ。しかし女王の命であれば、何か意味があると思います。私たちが高官に掛け合い探ってみます故、少しの間ご辛抱いただけないでしょうか」

自分たちと二回り以上歳の離れた男が、躊躇うことなく真摯に詫びる姿を見て、これ以上腹を立てる事は意味がないと四人は思った。

「これ以上話しても時間の無駄だ」
と京平が告げる。「待遇がよくないからといって腹を立てるのは愚かだ。俺たちはやるべきことの為にここにやってきたんだ。それを忘れるなよ」
「わ、わかってるよ、それくらい!」
と歌織は反論する。

綺那李はといえば、易々と従うことは出来なかった。このまま奴国(なこく)に一人で帰るつもりは毛頭ない。
「私は葉李菜様の命に従って、皆さんの護衛と世話係としてやってきたのだ。それを蔑ろにして邪馬台国の女王の命令に従う事は決してない」
「でも、綺那李ちゃんどうするの?このまま隠れて一緒に暮らすのは、難しいと思うけど・・・・」
と伊代は心配する。

むむむ、と綺那李が唸っていると、歌織は名案が浮かんだように溌剌と言った。
「良い案があるよ。綺那李さんも私たちと巫女の館に行けばいいんじゃない?紛れてしまえばバレないかも」
「えぇ!それは・・・・危険じゃないかな?綺那李ちゃんだけ歳が離れてるし、簡単に気づかれちゃうんじゃ」
「でも奴国で少しは巫女の修行を齧ってたんでしょ。私たちよりも上手く立ち回れるんじゃないの?」
「ずっとサボっていたけどね・・・・巫女の仕事は好きじゃない」

綺那李は明からさまに拒否反応を示す。
眉間に皺を寄せる少女の顔を見て、京平は膝を曲げ綺那李と目線を同じ高さにする。

「悪いけど、このクニに残る方法はそれしかないかもしれないな。それが嫌なら、奴国に今すぐ帰ったほうがいい。これ以上一緒にいて何かあっても、綺那李ちゃんを守れる自信がないから」
「守ってもらおうなんて思ってない!私は護衛だ、皆さんを守るのが役目だ」
「よく考えろ。もし命令に背いてずっと邪馬台国に滞在していることがわかったら、何らかの処罰の対象になるかもしれない。俺たちにその処罰をどうにかする力は、このクニでは無いんだ」

綺那李は現実を思い知り、どうにも出来ず黙り込んでしまう。
京平の真っ直ぐで鋭い指摘を受け、落ち込んだ綺那李を太市は哀れに思った。

「嫌いなことを無理にさせて申し訳ないけど、でも一緒にいてくれたら助かるな。俺たち、飯の作り方とか生活のあれこれについてまだ未熟だからさ、綺那李ちゃんがいてくれれば頼りになるかも」
「・・・・そ、そうか?」
「うん、私も心強いよ。言って私も巫女のことについては半人前もいいところだし、色々教えてもらえると嬉しい」
と、伊代も賛同する。

半ば強引に綺那李に頷くよう誘導したも同然だった。
しかし綺那李が残ることを外部に漏らさないよう、難斗米や都心牛利に言い含めてこの問題は収められた。
難斗米は申し訳なさからこの件については賛同し、巫女の館にも "三人” の侍女が新しくやってくると伝えることになった。

綺那李は不満の種を残しつつも、この竪穴式の小屋で四人との共同生活を始めることになった。