いつの時代も必ず君に逢いにいく 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




四人は到着すれば、まず女王か高官に引き合わされ挨拶をするものだと思っていた。
奴国で主祭殿に通されて葉李菜(ハリナ)やムラ長達の前に案内されたように、女王から直々に招待された客人としての待遇を受けるものと当然のように構えていたのだが。

四人がまず連れてこられたのは、主祭殿とは程遠い小さな竪穴式の小屋だった。
都心牛利(ツシゴリ)が説明するには、他国から来訪した者はまずここに通され、来訪の目的や身元についての形式的な詮議を受けるらしい。

そういうことなら仕方がない、と四人は指示に従うも、さらに驚くべきことが起きた。
応接の間に通されたものの、女王の招待人であるにも関わらず上座には邪馬台国の高官の席が用意され、難斗米と都心牛利が下座に座った。
あろうことか四人は応接の間に入ることすら許されず、対面する庭の地べたに広げられた藁の敷物に座るよう指示された。

「形式的なものです、短かい時間で終わりますから」
と都心牛利は楽観的に言う。
しかし難斗米の表情には申し訳なさの色が滲み出ている。

四人は戸惑いつつも、「奴国でいきなり牢屋に放り込まれた時よりはマシだ」と太市が進んで藁の上に座り、それに続いて伊代、歌織、京平も同じく隣に腰を下ろした。
綺那李(キナリ)の座るスペースも空いていたが、護衛だからと固辞し庭の隅で気配を消すように佇む。

少しして大きく腹の出た高官がやってきて、ズシンと音を立てて上座に腰を下ろした。

「奴国への遣い、誠に御苦労。四名の来訪者とは、その者達か?」
「左様にございまする。我らが女王の命により、お連れ致しました」
「うむ、御苦労。宿と配属先の手配は」
「仰せの通りに・・・・」

ふくよかな高官と難斗米、都心牛利の間だけで話は進められていき、四人は挨拶をする隙すら与えられない。
何が起きているのか。互いに顔を見合わせている間に話はまとまったようで、ふくよかな高官はようやく四人と目を合わせた。

「儂はミヤコのムラ長、賀舎(ガシャ)と申す。これより、其方達の配属を伝える」
「は、配属、とは・・・・?」
「女子達は巫女の館、男子達は大人(たいじん)の館にて、働くよう」
「それって・・・・下働きってこと?」
「それと、奴国から来た護衛がおるそうだな・・・・護衛というより子供ではないか。其方は役目を終え、故郷(くに)へ帰るように。ご苦労であった」
「・・・・い、いえ。私は奴国の女王より、邪馬台国で四人のお世話をして差し上げるよう言い遣っておりますので」
と綺那李は反論するが、高官達の耳には一切入っておらず話を先へ進められてしまう。

四人はさらに困惑し、驚きの声を隠せない。
伊代が勇気を出し、賀舎というムラ長に問いかける。

「恐れながら・・・・私たちは女王卑弥呼様から招待されて、遥々邪馬台国にやってきました。女王様にお目通りさせていただけるのではありませんか?」

伊代の意見に、賀舎は明らかに気分を害した。
眉間に皺を寄せ、ふくよかな腹をより一層踏ん反り返るようにする。
「其方達に発言を許した覚えはないぞ、言葉を慎むように。我らが女王の名を容易く口に出す者ではない、無礼であるぞ」
「ははっ、申し訳ありませぬ!!」
と都心牛利は素早く謝罪し、四人にも頭を下げるよう促す。
渋々頭を下げて詫びの言葉を口にするが、納得いくわけがない。

「すべては女王の命である。逆らう事は許されない。それからこの部屋の奥に其方達の寝所を用意した故、そこで寝起きし、我らが女王と邪馬台国の為に奉公するように。話は以上だ」
「ま、待ってください!聞きたいことが・・・・」

歌織が呼びかけるも賀舎は耳に入れず、そのまま背を向けて応接の間を去ってしまった。
煮え切らない疑惑を、残った難斗米と都心牛利に向けるしかなかった。