いつの時代も必ず君に逢いにいく 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜





数日の航海を経て、一行はいよいよ邪馬台国の主要港に到着した。
海に面した国である為他国からの玄関口となっており、港には大きな門が設置され検問が随時行われている。
また漁船の行き来も多く、邪馬台国における貴重なタンパク源をこの港にて確保していると言っても過言ではない。

無事の到着に安堵したのも束の間、ここから女王の住まう主要都市まではさらに陸路を進まなければならない。

邪馬台国はこの時代には、 “天上の国” とも呼ばれていた。
それは主要都市等の大半の地域が比較的標高の高い場所に位置している為と言われている。
詳しくは他にもそう呼ばれる所以はあるのだが、難斗米(ナシメ)からの説明を受け、残り数日の行程は陸路をひたすら進むことがわかった。

「つまり、ここから山登りってわけかよ」
と、太市は気の遠くなる思いで彼方の山林を見つめる。

港の賑わいから離れ、野畑を進み斜面を登る。
長い陸路で足は疲労の限界を迎えようとしていたが、唯一の救いは道が人の手によって作られている事だ。
今までの野道と違い、多くの人が通るために整えられたと思われる旅路は、アスファルトほどではないにしても砂利や小石が少なく、地面が押し固められているため歩きやすい。山道も幅広く整備されている。
道の舗装からして、邪馬台国の人口の多さや技術の進歩が窺える。

さらに数日の陸路となったが、奴国出発直後の疲労に比べると幾分軽く進むことができた。

「皆さま、あの峰の上をご覧ください。あちらが女王のおわすミヤコにございます」

"ミヤコ” と呼んで難斗米が指差した場所には、竪穴式住居がいくつも連なっているのが見えた。
目的地に近づくにつれすれ違う人の数は増え、やがて賑わう声が大きくなってくる。

「もう無理・・・・もう、歩けないよ・・・・」
と歌織が音を上げた時、幸運にもようやく邪馬台国の主要都市 "ミヤコ” に到着した。

奴国で滞在していたムラ以上に人の数が多く、行き来が激しい。
道も三倍ほど幅が広く、端には麻の敷物に野菜や魚、木の実等がずらりと並べられ、人々が集まって物々交換をしている。
金銭の交換は見られないため商売とは違うようだが、中には『不弥国(ふみこく)の特産の布』であったり、『馬韓(ばかん)から取り寄せた(まゆ)』など他国の品を声かけする者も少なくない。
まるで露店のようである。

「珍しいと思われるかもしれませんが、我がクニは連合国を結成して以来クニ同士の友好を深めるだけでなく、クニの繁栄の為に食料や物の流通を計ってきました。もとは海の向こうの大陸から持ちかけられた話ではありますが、我がクニ流に置き換え物と物の交換にて生活に潤いをもたらし、民を豊かにするのです」

「邪馬台国が、貿易や商売を先駆けて行ってきたんですね」
と伊代が感心して話すと、難斗米は目を丸くする。
「・・・・たしかに、馬韓や大陸の国々では "貿易” と呼んでおりましたが。よくご存知であられますな」
「え?あ、いや・・・・まだ "貿易” という言葉は浸透してないんですね。私の故郷ではよく話していましたので・・・・あははは」
と伊代は誤魔化す。
現代で馴染みのある言葉が、この時代でも使われているかどうかはわからない。注意して口に出さなければ、と伊代は肝に銘じた。