いつの時代も必ず君に逢いにいく 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




三人のやりとりを歌織も聞いていたが、別のことに気を取られて話が耳に入りづらくなっていた。
また、あの音だ。
甲高い耳鳴りが頭の中で響き、微かに気になる程度だった音が徐々に大きく、煩わしくなっていく。
頭痛にも似た症状を伴い、思わず歌織は顳顬(こめかみ)に指を押し当てる。

「歌織、大丈夫?」
伊代が歌織の異変に気づく。

「あぁ、ごめん・・・・また耳鳴りがして」
「再発したのか?長旅の疲れが出たのかもしれないな」
と太市が気遣う。

たしかに十日間以上歩き続けた疲れもあるかもしれないが、歌織は別に原因があることを予感していた。
あの奴国での処刑騒ぎの、落雷前と同じ耳鳴りである。体の不調というよりも、どこかから音が鳴り、何かを警告しているような不安感を煽るものだ。
悪いことの予兆だとすれば、この船旅に何か関係があるのかもしれない。
得体の知れない恐怖を感じ、歌織はそれを払拭する為に動き出した。

「・・・・あの、舟に乗る以外に方法はないんですか?」
歌織は意を決して、難斗米と都心牛利に相談した。
「はて、何か問題がございましたか?」
「その・・・・舟に乗るの、初めてなので不安で。少し体調もすぐれないので、陸路で行く方法があれば助かるんですけど」
「残念ながら、陸路ですと遠回りでたいへんな時間を要します。本格的な雨季に入る前に、邪馬台国に着かねばなりません。我が女王も心待ちにされております」
「じゃあせめて、晴れの日に延期しませんか?」
「その必要はないでしょう。曇り空ですが風はちょうどよいですし、沖を出ることはありませんから波も穏やかです。心配には及びませんよ」

都心牛利は懸念することなど全くないといったように、大きな口を開けて笑った。
難斗米も歌織の体調を気遣う素振りを見せたが、女王への早急な謁見を叶えるべく、これ以上の旅程の延長は望んでいなかった。