伊代は、今まで自分の脳内に留めていた推測を共有することにした。
「まず気になったのは、あの時の武者の言い方。『民が望む日の出をもたらす』って言っていたと思う。民にとって何か特別な日の出があるんじゃないかな」
「そんなこと言ってたっけ?すっかり忘れてるわ」
と太市は感心する。
「あとは、日の出をもたらす "金色の宝物” の正体。私は収穫したばかりの稲穂のことかなって予想してた。収穫祭の日の朝一番に、稲穂を神様にお供えする儀式をやって、それが朝日の昇る祭壇の上でのことだったんだけど、特に何も起こらなかった」
「たしかに、田んぼの稲は綺麗な黄金色に見えたよな」
そこで四人は、思い当たる金色のものを挙げていくことにした。
「えーっと、ベタにお金とか、高価なものとか?」
「この時代にお金ってあるのか?」
「今のところ、このムラで使われてるところを見たことは無いね。日本で最初のお金って何だっけ、授業で習ったような・・・・」
「和同開珎や、富本銭あたりかな。最初の流通通貨とされているけど金で作られている訳ではないし、この時代より四、五百年後の通貨で、弥生時代の遺跡で通貨は見つかっていなかったと思う」
「さすが伊代、まるで歩く日本史書だな」
日本史の研究で大学院に通う伊代は、希望の星だった。歌織の学生時代の日本史の成績は並以下で、『金といえば金閣寺か』とおよそ一千年後の建築物を候補に挙げた太市はまるで戦力にならない。
京平は終始口数が少なく、言葉を発したかと思えば喧嘩を売るような言葉選びが目立つ。
しかし伊代以外の三人も決して役に立たない訳ではなく、少ない歴史の知識だからこそ記憶を引っ張り出すのは容易だった。
「金といえば、 “金印” ってなかったか?」
と京平が突然思いつく。
「キンイン・・・・そんなのあったっけ?」
「太市、それはヤバいって。私でもわかるよ、歴史の教科書開いて三ページ目とかにあるやつ。そうか、それがあったじゃん! “金色の宝物” ってズバリ、金印のことかも!」
意気揚々とする三人と比べ、伊代は浮かない顔をする。
もちろん弥生時代を象徴する重要な文化財として、伊代の脳内では早い段階から検討していた。しかし金印には、今回の件に関わりがないと思わせる理由があった。

