いつの時代も必ず君に逢いにいく 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




改めて四人は、はじまりの城で武者から告げられたことを整理していくことにした。

弥生時代の日本に飛ばされた四人への課題は、『民に日の出を見せむべし』。
この時代に住む人々へ日の出を見せて欲しいという事だが、この時代へやってきてから二月、三月は経っており、その間に日が昇る光景を何度も見た。
この不可解な言葉について、真意は全くわからない。

その他に武者から告げられた事としては、命を落としてはならない、隣国と戦争をしてはならないという二つの禁忌。
そして試練を乗り越えるヒントとして、 "金色の宝物” が日の出をもたらす、ということである。

「俺と太市は全く知らないんだけど、あの処刑場で起こったことは全て前からわかっていたのか?激昂する駕籠彦王の前であんな危険な真似をして、首を刎ねられかけたところを偶然落雷が直撃・・・・うまくいき過ぎだし、説明不可能な怪奇現象だ。史実としてどこかで読んだことがあったのか?」
「いや、全く・・・・そもそも弥生時代の日本の出来事って、ほとんどわかってないの。この時代に来て、奴国の人たちが文字を書いているところを一度も見たことがないでしょ?日本の歴史上、史書や和歌集みたいに日本人の手で書かれた読み物は、どんなに古くても数百年先の話なの。唯一知る手がかりは、中国の史書にたまに日本のことが記されていて、それで読み取るぐらいしかない」
「だったら、この前の処刑場の事件は、偶然だったってことか?無茶も大概にしろよ」
「偶然だって。雷が王様に当たったのは、ね・・・・」
「"は”って?」

伊代の含みのある言い方に、京平はすかさず追求する。
京平の鋭さにたじろぐ伊代だが、ここでようやく黙っていた秘密を打ち明ける。

「実は・・・・大型の台風が来る事はわかっていたの。これは巫女の占いでも、大学の研究のおかげでもなくて、この世界に来てから見るようになった、不思議な夢のおかげなの」
「不思議な夢?伊代、たしか台風は、史書で読んだとかって言ってなかった?」
と歌織は疑問に思う。

「その不思議な夢はね、私の実家の書斎での出来事なの。私のお父さんが研究して出版した歴史大全を読む、それも私の空想とかじゃなくて、中身はちゃんと過去に読了した内容そっくりそのまま、鮮明に読むことができるの。まるで忘れていた史実を思い返すように」
「じゃあ台風の襲来は、その夢の中の歴史大全で読んだから知っていたってこと?」
「変な話だと思うでしょ、まるで予知夢みたい。いや、実際は過去の歴史の話なんだから、予知ではないのか・・・・」

「その夢の中で、"日の出” や "金色の宝物” についての話が書いてある本は無かったのか?」
と京平が質問を投げかける。

「そこまで読めてなくて。探そうと思ったんだけど、あの台風以来まったく夢を見なくなってしまったの。何かきっかけがあって夢を見れる訳ではないみたいでさ。重要な手がかりになるはずなんだけど、力になれなくて、ごめんね」

伊代の告白に感化され、歌織もずっと気にしていた現象について打ち明けようとする。

「落雷の前、私、頭が痛くなったの。とにかく耳鳴りが凄くて、気分が悪くなるくらいだったんだけど」
「それは俺たちも知ってる、すごい酷そうだったよな」
と太市が頷く。

「その耳鳴り、何だか変でさ、キーンって感じの音なんだけど、何かに呼ばれてるというか、警告されているというか、とにかくどうにかしなきゃっていう不安を煽るような感じがして・・・・伊代が殺されると思って庇おうとしたら、雷が降って来たでしょ。そうしたら、スッと耳鳴りは無くなって、すぐに気分が落ち着いたの。すごく気味悪くない?」
「確かにな。二人の話が本当なら、本物の巫女というか、魔法使いみたいじゃね」
と太市は調子良く返す。

「私たち、この世界に来て本物の巫女になっちゃったのかな?だとしたら怖いよね」
「もともと言い出したのは歌織だったじゃない?『私は東の方の国の巫女です』って嘘ついて、台風襲来説をみんなに流したのは、歌織が考えたシナリオだったの」
「なるほどな。その芝居で俺たちを牢獄から脱出させようとしてくれたって訳か。やっと理解したわ。俺たち何も知らないで、気がついたら伊代が崇め奉られてて、びっくりしたんだぜ」
と太市は納得する。

「まあ、その耳鳴りも伊代と同じく、あれ以来まったく無くて調子良いよ」
「でも話を聞く限りでは、今後何か役に立ちそうな予感はするな。またこの現象が起こったら、俺たちにも教えてくれ」
「了解。太市は頼りになるなぁ、一人で勝手に話を進める誰かさんとは違って」
と歌織は横目で京平を見る。
京平は嫌味に対して返事することもなく、一人で何かを考えているらしい。

「京平。何か気になってることでもあるなら、私たちにも共有してよ。何のための四人かわからないじゃん」
と歌織が突っかかる。
再びの喧嘩の火種の予感に、太市はすぐに二人を落ち着かせようとする。

「まあまあ。とりあえず俺たちも考えてみよう。民に日の出を見せる、とはどういう意味か」
「日の出ねぇ。いっそ奴国の人たち全員を読んで、日の出を見る会でも催してみる?」
と、歌織は冗談混じりで提案する。
「それは・・・・ちょっと違うかも」
と伊代は苦笑いする。