いつの時代も必ず君に逢いにいく 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜





「実際は・・・・追い払われたようなものなんだ。あまりにも父様に引っ付いて回って、兵士の仕事をさせて欲しいって煩くしたから、私を遠ざける目的で牢獄の掃除を見てくるように言ったんだろうな」
「綺那李は、お父さんに引っ付いて回るほど、兵士になりたいんだな」
と太市は腰を下ろして、綺那李の話に耳を傾ける。

「そうだ。駄目だと言われ続けても、引き下がることはないだろう」
「とても強気だね。兵士になりたいと思ったきっかけってあるの?」
「きっかけ?・・・・小さい時からずっと、私は兵士になるとばかり思ってたんだ」
「今も小さいけどな」
「うるさいぞ。すぐに大きくなって、太市様なんか見下ろしてしまうからな!」
「マジか、すごいデカくなるじゃん。そんな女兵士がいたら、最強だな」
「そうだ・・・・私は父様の第一子で男兄弟はいない。大人になれば必然的に父様と同じ兵士になるんだと、物心ついた時から思っていた。父様の背中を追いかけてきたのに、女だから兵士にはなれない、女なのに走り回るんじゃない、兵士の頭となる婿を取れと言われ、家の中に縛り付けられるようになった。それがずっと嫌でたまらなかった。私も兵士になりたい。力をつけて、誰にも何も言わせないくらい偉くなりたい。そして・・・・父様の後継ぎになりたい。父様に仕事を任せてもらいたい」
「それが本心なんだな。お父さんに認めてもらいたいってこと」
「そんなに悪いことなのか?私は間違っているのか?」
「俺は、間違いだとは一切思わない。でもお父さんからすれば、可愛い娘がムラを守る戦士になりたいって言ったら、心配になっちゃうのは仕方のないことだと思うよ。それは綺那李が女だからとか、男より弱いからってことではなく、単純な親心としてね」

綺那李は話すうちに、反論や疑問を投げかけることが少なくなっていった。
綺那李のまわりの大人達とは違い、太市は綺那李を否定することは絶対にしない。
かといって大人達の言い分を否定することもしない。
庇うのではなく、彼らの思いを汲み取り言葉に変え、綺那李を納得させることが出来る。
そこに綺那李は、心地よさを覚えた。

「これからもきっと反対され続けると思うけど、綺那李はそれでも諦めないで、兵士としてやっていけるってことをアピールし続ければいいと思うよ」
「あぴーる?」
「つまり、お父さんに引っ付いて回ればいいってこと。あとは、兵士として役に立つんだってことをみんなにわからせるんだ。例えば、俺たちが掃除をちゃんとやってるんだってことをお父さんに細かく報告するとか」

「太市は喋ってばかりで、まともに掃除してないけどな」
と京平が口を挟む。

「俺もさっきまでちゃんとやってたからな。そこはうまくお父さんに報告してくれよ」
「はいはい、他には?」
「他には、困ってる人の手助けをするとか」
「なるほど・・・・太市様は困ってることはないか?」
「え、俺?俺かぁ・・・・今の悩みは、釈放された人がなかなか牢獄を出て行かないってことだな。その人には世話になったからさ、いい奉公先を紹介して、気持ちよく出てもらえるようにしたいんだけど」
「それって、加真次って人のことか?」
「そうそう。綺那李、知ってたのか。たしかに何度か牢獄に来てたもんな」
「顔に大きな入れ墨をしているだろう。たぶんあれは、水夫だ」
「す、すいふ?」
「入れ墨は、過去に人を殺したような大きな罪を負った人につけられるんだ。でも加真次の罪は、小さな盗みだったんだろう?であれば、他に考えられるのは水夫だって、前に父様が言っていた」
「へぇ、その水夫ってのは、顔に入れ墨をするのか。っていうか、水夫って何?」
「私はよく知らない。船に乗る人だってことくらい」
「なら、その水夫の仕事に戻れるようにしてあげれば、加真次は安心して出ていけるかもしれない。さすが綺那李、すぐに役に立ったじゃん」
「そうか?手助けになったなら嬉しいけど・・・・」

そこへ兵長の代理として、九真由が太市と京平のもとへやってきた。
葉李菜から呼ばれていることを伝え、歌織と伊代も呼び出された主祭殿へ向かうこととなる。