「はい、国際学部の一年です。自主勉しようと思って場所を探していたら、たまたまピアノの音と歌が聞こえてきて。勝手に聞いて、すみませんでした」
「いいよ、別に。まだ未完成だから恥ずかしいんだけど」
「自分で作曲してるんですか?カッコいいですね」
「ありがとう。君、音楽に興味あるの?」
「え、俺?いや、音楽経験は全く・・・・でも今の曲が良い曲だって事はわかりました」
「嬉しい事言ってくれるじゃん」
女子学生はそう言って、手招きをする。
京平にピアノの側まで近づくよう、誘っているのだ。
京平は戸惑い、少し緊張しながらもピアノの横まで近づく。
「ねぇ、一緒にバンドやらない?」
「・・・・え、バンド?」
「軽音楽サークルに入部しようと思ってるんだけどさ、今年の一年生の入部希望が私以外に無いんだって。一人じゃバンド組めないから、今年は入部受付けないような空気になってて困ってるの」
「いや、でも俺、楽器やった事ないですし・・・・ていうか、アレ?ということは、同じ一年生?」
「そうだよ。最初に言ったじゃん」
「いや、訊かれただけだったし、最初からタメ口だったからてっきり先輩だと・・・・」
「敬語を使ってたのはそっちの勝手でしょ。そんな事より、お願い!楽器は私の貸すし、ちょっとだけ弾いてくれればいいから。何なら、勉強しててもらって全然いいし!」
「それって、バンドやる意味あるのか・・・・?」
「あるよ!生徒二人以上で、教室の貸出申請が取れるの。この広い音楽室で、やりたい放題できるよ。先輩方は狭い部室でぎゅうぎゅう詰めになってやってるけど、ここでやる分には全然いいでしょ」
女子生徒は用意していた入部届を京平に差し出した。
その用意周到さに、入部をしてくれさえすれば誰でも良いのだと、彼女の奔放さが垣間見える。
京平は勿論すぐに返事はしなかった。
しかし彼女の好意に甘え、音楽練習室の隅の勉強机を借り自習をさせてもらった。
彼女が弾くピアノの音をBGMに、意外にも勉強は捗った。勉強を促進する適切な選曲をしていたのかもしれない。
その心地よさに気付いた京平は、翌日入部届に署名する事を承諾した。
そして女子生徒は自分の名前を、文学部一年の蜂谷歌織だと告げた。

