タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜





宴を楽しむ人々は徐々にその活気を弱め、酒に酔って地べたに横になり始める。
女子供は住居に戻りいつものように床に着くが、男達は意地でも焚き火の周りから離れず、意識を失うまで飲み続けようとしている。

焚き火の勢いも弱まる中、歌織と京平は遠くからその様子を眺めている。
お互い何を話すべきか会話に困りつつも、その静寂を苦とはせず、静かに酒と米を口に運ぶ。

燃える薪がパチリと音を立てたのを聞き、それを合図のように京平が口を開く。

「・・・・体調は大丈夫なのか?」
「・・・・え?」
「頭が痛いって言っていただろ」

京平が指すのは処刑台に立ったあの日、歌織が訴えていた酷い耳鳴りだ。
症状は深刻で頭痛や目眩にも似た現象を引き起こしたが、殺されるか否かの混乱時に気にする事も出来ず、王の制裁から伊代を庇った瞬間に耳鳴りは治ったようだ。
原因はわかっていないが、あの日以来再発していない。

「あ、うん。治ったみたい。頭痛っていうより耳鳴りだったんだけどね」
「・・・・そうか」
「・・・・京平も、体調は大丈夫?」
「あぁ、普通に飯食えるし、家の修繕とか重労働も出来ていたし」
「そっか、良かった」

二人の間に、再び沈黙が訪れる。
焚き火の向こうで、二人の男が何やら言い争っている。声を荒げているが呂律は回っておらず、一人が相手の胸ぐらを掴んだがそのまま相手の胸に頭をもたげ、二人ともブツブツと言いながら眠りについてしまう。

「・・・・何だか、こうやって落ち着いて話すの、久しぶりじゃない?」
「・・・・そうか?」
「結構ドタバタしてたし・・・・京平とは、ちゃんと落ち着いて話したいなって思ってた」
「何だそれ。まるで重大な隠し事を打ち明ける前置きみたいだな」
「そんなんじゃないって。というか、最近ずっと売り言葉に買い言葉でさ、したくもない口喧嘩ばかりしてたように思うし。本当は衝突したい訳じゃなかったんだけど」
「・・・・それは同感だな。何だよ、突然大人しくなって。歌織は酒が入ると素直になるタイプだったっけ?」
「違うけど・・・・まぁ、そういうことにしといて」

歌織は酒の入った瓶を掴み、京平に勧める。
久々に心の平穏を取り戻した二人の間に流れる空気は少しむず痒く、歌織は照れを隠すように酒を注ぐ。
酒瓶を持つ手が僅かに震え、持ち慣れない弥生の杯から酒が溢れ、京平の手を伝っていく。
指に垂れた酒を舐める京平の仕草に、歌織は一瞬目を奪われる。
その視線を感じ取った京平は、怪訝な顔をする。

「・・・・何、じっと見て」
「え、あ、いや・・・・汚いよ!指を舐めるなんて」

京平の言葉に我に帰った歌織は、自分の行いへの羞恥を隠すようにわざとらしく目を逸らす。

「別に汚くなくね?おにぎりとか手掴みで食べてるし、そもそも手掴みで食べる料理多いし」
「・・・・まぁ、そう、かもね」
「ククッ・・・・何、その返し。面白すぎだろ」

京平は肩を震わせて笑う。
笑われた歌織は良い心地はしなかったものの、京平の笑顔を見るのは久方ぶりだったので、安堵した。
大学を卒業し、それぞれの進路に進んでからは京平と会う事は無かった。それから数えるとするなら、一年ぶりに彼の笑顔を垣間見ている事になる。