「えーと、つまりは、電話でアルバイトの申し込みがあった時、なぜか僕がフロアで、アニーちゃんが電話のとこにいたと。で、僕の声を使って、それを引き受けたわけだね?」

『セイ! カー…い』

「それ使って返事しないで! なんで引き受けたの、そういうのは僕にまず報告してくれないと困ーー」

『ウメル…ゾ!』

 ダーシャの喋りに、唐突に音声が割り込む。

 ダーシャはビクッ、と体が強張った。

「すいません、誤作動です」

 アニーが謝罪するが、本当に誤作動か? と、ダーシャはドキドキと疑心暗鬼になる。

「もっとアルバイトの人数がいれば、店長も休み取れるって思ってやったことなんじゃないですか? 多めに見てあげましょうよ」

 と、静観を決め込んでいたビロルが入ってくる。悪ノリをすることもあるが、基本的にはまとめ役で、下の子達への配慮もできる子だ。一歩引いたところから、物事を見ることができる目を持っている。

『ビロル、くぅぅん……キミ、は! ジ、キュウ……アップ、だ、ァー!』

「よしてくださいよ店長、当然のことをしたまでです」

「僕じゃないよそれ」

 前言撤回。色々節穴だ。

 嘆息しつつも、せっかく来てもらった面接の方は、一応やってみようとダーシャは切り替える。人数が多くいて困ることはない。ちゃんと働いてくれるなら、むしろアニーのファインプレーになるかもしれない。そしたら儲け物だ。

「まぁ、とりあえず事務所まで案内してもらえる? このまま帰すわけにもいかないでしょ」

 店外の入口で待っているらしいので、カッチャに伝えて移動する。できればフロアかなぁ、でもビロルくんの負担も大きいしキッチンもできる子だと嬉しいね、と面接の会話をシミュレーションする。とりあえず、ヤバすぎなければ採用してから考えよう。