「はい、正確には飲み終わったカップに願い事をしながら回し、カップを逆にして液体と粉が分離するまで待ち、底に残った粉の形から占う、となっています。その形から、どこに応募しようか、決めていただきました」
過去に行ったコーヒー占いを思い出し、ユリアーネは力強く頷く。占いという、信憑性の怪しいものではあるが、彼女にとっては信頼に値するものらしい。
「それ、最初にやった人、なんでそんなことやったんだろうな」
あまりにも面倒かつ時間のかかる占い方に、ビロルが率直な意見を述べる。自分だったら、どんなに酔っ払って正常な判断ができなくても、そこまで面倒なものは思いつかないのに、と内心で思った。
「それ言ったら、カニ味噌を最初に食べた人にも言えるっスよ」
前々から気になっていたことを、この場でアニーも吐露する。甲殻類をパカっと開けて、中身を吸うなんて原始人かと最初思った過去。しかし食べてみると美味い。最初に食べた人には、秘蔵のサバラガムワ茶葉をあげよう。
「ともかく。それでどんな形だったんですか?」
相変わらず話の腰を折るふたりを止め、ダーシャは先に促す。コーヒー占いに少し興味が出てきた。一体、どんな形になればこの店だと思えるのか。今後の話のネタにもなるかもしれない。
しかし、浮かない顔でユリアーネは拳を強く握った。
「それが……わからなかったんです」
そして、申し訳なさそうに唇を噛む。
「え? じゃあなんでウチに?」
期待値を高めていたダーシャは、肩透かしをくらう。だが、それはそれでなぜこの店になったのか、違う興味が出てきた。
俯いていた顔をクイっと上げ、そのビー玉のような輝きを放つユリアーネの瞳は、ダーシャを捉えた。
「適当です。わからなかったので、その時、最初に目に入ったお店にしようと」
「いや、占いの意味」
と、控えめにビロルはツッコミを入れる。本当はもっと鋭くツッコみたいのだが、騒がしい男だと彼女に思われても困る。だが、なにもしないのもつまらない男。本当は「バカ……それじゃ意味ないだろ?」と優しく頭を撫でたい。
そんなビロルの妄想をかき消すように、まぁまぁ、とアニーが間に入る。
「いいじゃないっスか。理由なんてなんでも。店長だってどうせコネ入社でしょ?」
ね? と、ダーシャに笑みを浮かべた。このヒゲ独身がまともに職につけるなんて、どうせ裏でよくないことをやっているからに違いない。いつかレコーダーで録音してやるっス。
そのダーシャは嘆息する。
「いや、『ね?』と言われても。どうせってなによ。普通にアルバイトから声かけてもらっただけだから」
失敬な、とわざとらしく不満を表現する。
すぅ、っと深呼吸したユリアーネは突拍子もないことを突然発言する。
「それで、いつ頃こちらのお店は譲っていただけますか?」
過去に行ったコーヒー占いを思い出し、ユリアーネは力強く頷く。占いという、信憑性の怪しいものではあるが、彼女にとっては信頼に値するものらしい。
「それ、最初にやった人、なんでそんなことやったんだろうな」
あまりにも面倒かつ時間のかかる占い方に、ビロルが率直な意見を述べる。自分だったら、どんなに酔っ払って正常な判断ができなくても、そこまで面倒なものは思いつかないのに、と内心で思った。
「それ言ったら、カニ味噌を最初に食べた人にも言えるっスよ」
前々から気になっていたことを、この場でアニーも吐露する。甲殻類をパカっと開けて、中身を吸うなんて原始人かと最初思った過去。しかし食べてみると美味い。最初に食べた人には、秘蔵のサバラガムワ茶葉をあげよう。
「ともかく。それでどんな形だったんですか?」
相変わらず話の腰を折るふたりを止め、ダーシャは先に促す。コーヒー占いに少し興味が出てきた。一体、どんな形になればこの店だと思えるのか。今後の話のネタにもなるかもしれない。
しかし、浮かない顔でユリアーネは拳を強く握った。
「それが……わからなかったんです」
そして、申し訳なさそうに唇を噛む。
「え? じゃあなんでウチに?」
期待値を高めていたダーシャは、肩透かしをくらう。だが、それはそれでなぜこの店になったのか、違う興味が出てきた。
俯いていた顔をクイっと上げ、そのビー玉のような輝きを放つユリアーネの瞳は、ダーシャを捉えた。
「適当です。わからなかったので、その時、最初に目に入ったお店にしようと」
「いや、占いの意味」
と、控えめにビロルはツッコミを入れる。本当はもっと鋭くツッコみたいのだが、騒がしい男だと彼女に思われても困る。だが、なにもしないのもつまらない男。本当は「バカ……それじゃ意味ないだろ?」と優しく頭を撫でたい。
そんなビロルの妄想をかき消すように、まぁまぁ、とアニーが間に入る。
「いいじゃないっスか。理由なんてなんでも。店長だってどうせコネ入社でしょ?」
ね? と、ダーシャに笑みを浮かべた。このヒゲ独身がまともに職につけるなんて、どうせ裏でよくないことをやっているからに違いない。いつかレコーダーで録音してやるっス。
そのダーシャは嘆息する。
「いや、『ね?』と言われても。どうせってなによ。普通にアルバイトから声かけてもらっただけだから」
失敬な、とわざとらしく不満を表現する。
すぅ、っと深呼吸したユリアーネは突拍子もないことを突然発言する。
「それで、いつ頃こちらのお店は譲っていただけますか?」