*優斗視点
春休みになった。
今日は高瀬と朝からひょう花に行って、お昼ご飯も食べて。いつもよりも長い時間一緒に過ごそうって話になった。
朝、顔を洗って化粧水を顔につけているタイミングで高瀬が迎えに来た。
想像よりも早く来た。玄関で待たせるのは悪いかなと思って、部屋で待っててもらうことに。
「ごめんね、急いでメイクするから」
「別に急がなくてもいいし」
そう言ってくれたけれど、待たせるのは落ちつかない。
最近はファンデーションとかチークとか、メイクを始めた頃には買っていなかったものも揃えた。アイシャドウとかも違う色を試したくなったりもして。メイク道具が増えてきたから、薄いピンク色の小さなテーブルとメイクボックスを買って、メイクコーナーを作った。
すぐにそこでメイクを始める。メイクしている姿をまじまじと見つめてくる高瀬。ドキドキしてアイラインの目尻部分が少しずれた。
「ちょっと、見られるの恥ずかしいんだけど……」
「あ、ごめん」
後ろを向く高瀬。
僕に背中を向けながら高瀬は言った。
「化粧してる時の赤井、楽しそうだな」
「楽しいよ。メイクしたら可愛くなれて、自信が持てるから」
「化粧してもしなくても、両方可愛いけどな……」
僕は鏡から視線を外し、高瀬の背中をちらっと見る。
可愛いってたまに周りから言われるけど、高瀬に言われるのがいちばん嬉しい。
――好きな人から言われた言葉は、特別な言葉になる。
「赤井にとっての化粧は、俺が足湯好きみたいな感じか……」
「僕は足湯も大好きだけどね。足湯というか、高瀬と並んでお湯に足を入れるのが好き」
着替えて肩まで伸びた、自分の髪の毛を整えると、家を出た。
今日は天気がよくて、春の匂いもする。
ここに来たばかりの、新鮮な春の空気を思いきり吸った。
「今時期は、外を歩くのが気持ち良いよね」
「今日は春の匂いがするな?」
僕が感じていた香りを高瀬も感じていた。
「高瀬も匂いを感じるんだね?」
「あぁ、気分が良い時は感じるかな」
今高瀬は気分がいいんだ。
僕とこうして並んで歩く時間を、そう感じてくれているんだ。
「僕も、今はとても気分がいいよ」
外の心地良さ、そして隣に高瀬がいることが幸せだな。ってずっと歩きながら思っていた。
そしたら楽しくて、気持ちが高ぶりすぎて――。
「高瀬、手、繋いでいい?」
「う、うん」
普段なら自分から手を繋ごうなんて、絶対に言えない。だけど積極的な気持ちになって、高瀬と手を繋ぎたくて、正直な気持ちを伝えられた。
僕の右手と高瀬の左手。繋いだ手を空にある太陽の光に繋げたくなった。
無理やり僕たちの手を上げ、光に当てた。
すると、明るい光が僕たちの手を包んでくれた気がした。
「僕たちの手が輝いてみえるね……」
「ほんとだな」
輝いているようにみえる、繋がっている手をしばらく眺める。
しばらくすると「そろそろ手が疲れてきた」と高瀬は言った。
手を下ろしても、ずっと高瀬と繋がっていたかった。
「僕、この手を離したくない」
「俺も。この手、一生離せないかも」
「いや、それは困るかも……」
手を繋ぎながらふたりで笑った。
光に照らされた温かい雪が降ってきて、僕たちを祝福してくれたみたいだった。
春休みになった。
今日は高瀬と朝からひょう花に行って、お昼ご飯も食べて。いつもよりも長い時間一緒に過ごそうって話になった。
朝、顔を洗って化粧水を顔につけているタイミングで高瀬が迎えに来た。
想像よりも早く来た。玄関で待たせるのは悪いかなと思って、部屋で待っててもらうことに。
「ごめんね、急いでメイクするから」
「別に急がなくてもいいし」
そう言ってくれたけれど、待たせるのは落ちつかない。
最近はファンデーションとかチークとか、メイクを始めた頃には買っていなかったものも揃えた。アイシャドウとかも違う色を試したくなったりもして。メイク道具が増えてきたから、薄いピンク色の小さなテーブルとメイクボックスを買って、メイクコーナーを作った。
すぐにそこでメイクを始める。メイクしている姿をまじまじと見つめてくる高瀬。ドキドキしてアイラインの目尻部分が少しずれた。
「ちょっと、見られるの恥ずかしいんだけど……」
「あ、ごめん」
後ろを向く高瀬。
僕に背中を向けながら高瀬は言った。
「化粧してる時の赤井、楽しそうだな」
「楽しいよ。メイクしたら可愛くなれて、自信が持てるから」
「化粧してもしなくても、両方可愛いけどな……」
僕は鏡から視線を外し、高瀬の背中をちらっと見る。
可愛いってたまに周りから言われるけど、高瀬に言われるのがいちばん嬉しい。
――好きな人から言われた言葉は、特別な言葉になる。
「赤井にとっての化粧は、俺が足湯好きみたいな感じか……」
「僕は足湯も大好きだけどね。足湯というか、高瀬と並んでお湯に足を入れるのが好き」
着替えて肩まで伸びた、自分の髪の毛を整えると、家を出た。
今日は天気がよくて、春の匂いもする。
ここに来たばかりの、新鮮な春の空気を思いきり吸った。
「今時期は、外を歩くのが気持ち良いよね」
「今日は春の匂いがするな?」
僕が感じていた香りを高瀬も感じていた。
「高瀬も匂いを感じるんだね?」
「あぁ、気分が良い時は感じるかな」
今高瀬は気分がいいんだ。
僕とこうして並んで歩く時間を、そう感じてくれているんだ。
「僕も、今はとても気分がいいよ」
外の心地良さ、そして隣に高瀬がいることが幸せだな。ってずっと歩きながら思っていた。
そしたら楽しくて、気持ちが高ぶりすぎて――。
「高瀬、手、繋いでいい?」
「う、うん」
普段なら自分から手を繋ごうなんて、絶対に言えない。だけど積極的な気持ちになって、高瀬と手を繋ぎたくて、正直な気持ちを伝えられた。
僕の右手と高瀬の左手。繋いだ手を空にある太陽の光に繋げたくなった。
無理やり僕たちの手を上げ、光に当てた。
すると、明るい光が僕たちの手を包んでくれた気がした。
「僕たちの手が輝いてみえるね……」
「ほんとだな」
輝いているようにみえる、繋がっている手をしばらく眺める。
しばらくすると「そろそろ手が疲れてきた」と高瀬は言った。
手を下ろしても、ずっと高瀬と繋がっていたかった。
「僕、この手を離したくない」
「俺も。この手、一生離せないかも」
「いや、それは困るかも……」
手を繋ぎながらふたりで笑った。
光に照らされた温かい雪が降ってきて、僕たちを祝福してくれたみたいだった。