中学生の一団を案内して戻ってくると、メガネ君が受付カウンターで待っていた。
 何やらそわそわと動いている。

「あの、高坂さん、注文取ってきたんですけど、ジンジャーエールって。えっと、どうしたらいいですか?」

「あー、こっち。衝立の裏にキッチンあっから。ソフトドリンクはディスペンサーな。ほら、ファミレスとかによくあるやつ。コップは下ね。紙コップ」
「あ、はい。あの僕、結構前に注文受けてて」

 焦ってコップを出そうとするメガネ君は、初々しくてちょっとかわいい。
 あー、私も入ったばかりの頃はこんなだった気がする。
 思いながら、私は自分もそうされたように、お姉さんぶってフォローしてやった。

「あー、ダイジョブよ。あのおばちゃん、どうせ歌うのに夢中だから。焦らんでやって。できたらそこのトレイに載せて持って行って終わり」

「わかりました」

 生真面目に返事を返すと、メガネ君は慎重にそれをトレイに載せてキッチンを出る。
 肩にガチガチに力が入っていて面白い。
 その後姿に、私は思わず吹き出してしまっていた。

 その日は、それから5、6組の客が続き、平日にしては忙しい日になった。

 高校生バイトは10時に引け、大学生さんか店長にバトンタッチする。持ち込みはないところだけど、夜はお酒入ってるひとが多くて後片付けが大変だから、その点はラッキーだ。

「おつかれーす」
「あら、あゆちゃんお疲れさま。天童君も、どう、やっていけそう?」
「あ、はい。大丈夫だと…思います」

 チラッと私を見たメガネ君に、私は小さく頷いた。

「そ、じゃあ、明日からもよろしくね」
「はい」