「えっと、やることは基本、受付とレジ、オーダー、それから後片付けね。学生って言われたら生徒手帳を確認。割引があるから。今入ってるのは、1部屋だけ、常連のおばさん。出るのは2時間後の予定、オーダー入ったら注文取り。今回は初めてだから一緒に行ったげるから」

「あ、ハイ」

 さすが、メガネをかけている人って真面目だ。私の言ったことを、一生懸命に紙のメモに取っている。
 生真面目な様が何となく可笑しくって、私はついお喋りになってしまった。

「あ、高坂…さん。今部屋番号が画面に出ました」
「あー、なら注文入ったかも。じゃあ行ってみ…あ」

 メガネ君と注文取りに行こうとしたら、自動ドアが開いて学生の集団がやってくる。

「ゴメン、受付やるから。一人で行ってきてくれる?廊下の一番奥の部屋ね!」

「わ、分かりました」

彼は自分のメモ帳を持って、慌てて廊下を走っていった。

「っしゃっせー」
「あ、5名お願いします。学生です」
「うっす、生徒手帳お願いしまーす」

礼儀正しく生徒手帳を出したのは、近くの進学校の中学生達だった。淡々と彼らの手続きをしながら、私は、一人で注文に行かせてしまったメガネ君の身を案じていた。

そういやあ、伝票に書けっていうの忘れてた…大丈夫かな。まあいっか。