「オイ、ちゃんと前見て歩けよ!」
 大きな声が昼休みの廊下に響いたとき、寿洸太(ことぶきこうた)は図書室から自教室に戻ろうとして渡り廊下の角を曲がったところだった。
 ぬっと影が足元に現れて、はっとしたときにはもうぶつかりそうになっていた。びくっとして本をばさばさっと取り落とす。そろりと顔をあげれば、聞き覚えのある声の主はやはり長身の金髪プリンだ。傍から見れば、一年ヤンキーに影の薄い二年男子が絡まれたようにしか見えないだろう。
 この人が雨の日の捨て猫に傘をさすタイプだったらいいのにな。
 洸太の頭の中で黒い子猫がニャーンと鳴いた。


「貸出期間は二週間です」
「ありがとうございます」
 図書室のカウンターで本を三冊受け取ると、洸太は図書室を出た。
 昼休みの廊下は梅雨の湿気が入り込んでじめじめしていた。この時期はくせっ毛の髪がふくらむのが嫌いだ。眼鏡にかかる前髪を手ですき、渡り廊下から本校舎へ戻る。複数の科が集まるこの高校は生徒数も多く、休み時間は常にざわざわとして騒がしい。特に静かな図書室から出ると学校の音の波が一気に押し寄せてくるように感じる。
 学校でもっとも静かな図書室は、洸太のお気に入りの場所だった。
 図書室という魔法はじきに鳴き始める蝉のうるさい鳴き声さえ、本に集中するためのBGMにしてしまう。本をめくる音に貸し出しのカウンターでやり取りする声や、ときおり聞こえるピッという電子音、勉強する生徒のシャーペンがカリカリと走る音が、水たまりに水滴を落としたように静かに広がっていく。
 そこに置かれた小説を読めばひとつひとつの世界が広がっていて、現実世界からそちらへと逃げ込むことができる。本をめくるという行為が洸太にマジックをかけるのだ。電子書籍では感じられない指先の感触は部活中も感じるもので、どこか親近感がある。
 だが、その親近感を求めに行った帰りの廊下で彼と遭遇するとは思わなかった。図書室のカウンター内にいなかったから完全に油断していた。
「オイ、失礼だろ。ちゃんと謝れよ」
 低い声に思わず首を縮める。「ごめんなさい」と声を振り絞り、勇気を出してぐっと顔をあげた。
 ところが、白シャツの第一ボタンが外れた彼は洸太を見ていなかった。一緒にいる集団の中のひとりを目つきの悪い目で睨んでいる。
「先輩にぶつかりそうになったんだぞ。謝れよ」
 洸太の理解が追いつく前に、隣の男子が眉尻を下げて「すみません」とぺこりと頭を下げてくる。
「そっちから人が来ると思わなくて」
 自分が謝られている。はたとそのことに気づき、慌てて首をぶんぶん横に振る。
「僕こそごめんね! 下を見てて気づかなくて」
「いえ、驚かせちゃったみたいで本当にすみませんでした」
 洸太と男子がやり取りしている横で、「ったく」と金髪プリンが洸太の落とした本を拾った。そしてポケットからタオルハンカチを取り出す。白と青のボーダーのふっくらとしたタオル。
 彼はていねいに本の表紙を拭き、「先輩、すんませんでした」と差し出してきた。驚いて受け取ると、彼が真面目な顔で隣の友人を指さして言う。
「ダチがすんません。先輩の代わりにオレがこいつをボコっときます」
 気づけば廊下にいる二年生が固唾(かたず)を飲んでこちらを見守っている。ボコるの言葉に体が硬直した洸太の前で、金髪プリンが親指と中指で丸を作った。
「オイ、歯ァ食いしばれ」
 彼の鋭い声と同時に指が友人の額にデコピンを放った。やられた友人が「くすぐって!」と額を押さえる。
「もう、ミナトの『ボコる』っていつもやわいデコピン」
「んだよ。グータッチのほうがいいのかよ。グーは痛えだろ」
「グータッチはタッチの一種だからボコれねえだろ」
 デコピンを受けた男子が笑い出し、彼らのうしろにいた他の一年生集団からも「ミナトって天然だよな」とどっと笑いが起こった。だが、金髪プリンは真剣な顔つきでこちらを見下ろしてきて、「グータッチのほうがよかったっすか」と尋ねてくる。
 急いで首を横に振ると、彼は「そすか」とあっさりと頷き、彼らは別の話題に移っておしゃべりしながら特別教室のほうへ歩き出した。あははという笑い声が遠ざかり、ほっと胸をなで下ろす。
 ああ、びっくりした。僕が怒られたのかと思った。
 思わず目でその背中を追いかける。集団の中でもひとりだけ頭がぴょんと飛び出したプリンが隣の彼になにか言い、友人がおかしそうに笑う。雨の日の捨てられた子猫に傘をさすタイプかは分からないが、本を落としたら拾って拭いてくれるタイプらしい。
 本を抱きかかえてはあとため息をつくと、廊下中の二年生が安堵した表情でこちらを見てくる。顔が熱くなった洸太は、誰ともなくぺこぺこと頭を下げた。長い前髪がぼさぼさに見える自分が恥ずかしくなって、手で髪をすく。
 そこへ奥の教室から出てきた女子が「コータ!」と手をあげた。
「今日の部活、顧問の先生いないって」
「あ、うん、分かった」
「ソータにも言ってあるから」
「ありがと」
 洸太はもう一度息をつき、自分の教室に入って五時間目の数学の教科書を取り出した。放課後のことを考えるとすぐにわくわくしてくる。先日の学内公演が終わって三年生が引退し、次の学内公演は九月の文化祭。一、二年生だけで行う演劇の学内公演は文化祭がデビュー戦だ。
 洸太が所属する演劇部は、この辺りの高校ではそこそこ有名である。筋トレや発声、エチュードの基礎練習もしつつ朗読でコンクールに出る生徒もいるし、一昨年昨年と連続で県大会に出場、卒業生には俳優や声優になった人もいる。
 二学年の現在、二十人ほどいる部員たちは日々切磋琢磨しており、教室では大人しい部員も舞台の上に立てば生き生きと振る舞う。
 洸太は照明係で、全体を通して舞台の調光を行っている。スポットライトの明るさ調整だけの簡単な役と思われがちだが、光が与える印象や色彩の勉強もするし、電気系統の知識も必要だ。
 照明係も裏方であることは変わりないので、工具や軍手を入れた腰袋を下げて大道具係とノコギリを扱うことも珍しくない。おかげでやたらと筋肉が鍛えられる。
 今は夏大会と九月の連休に行われる文化祭の練習が始まるところで、在校生や来校する受験生が親しみやすい高校生が主人公の作品を披露する。友情や恋愛などに揺さぶられる青春を描いた話は、脚本で賞を取ったこともある有名作品だ。
 キーンコーンカーンコーン。始業のベルが鳴る。洸太は入ってくる教師の姿を確認し、「起立」と号令をかけた。


「あっ」
「あ」
 翌日、放課後の図書室のカウンターで会ったのは例の金髪プリンだった。部活の調べもので寄ったのだが、まさか昨日の今日で会うとは思っていなかった。向こうもこちらを認識している様子で、目を丸くさせる。
 顎あたりまである外ハネの長髪は、今日はまとめて後ろで小さなしっぽになっている。五センチほどがキャラメルとなったプリンが少しだけすっきりして見えた。
「え、えっと、一冊貸し出しをお願いします」
 急いで本とプラスチックの図書室カードをカウンターの上に置くと、内側に立つ彼は「っす」と受け取って本のバーコードを読み取った。ピッ。静かな図書室内に音が響く。彼が声を落として「昨日の本は大丈夫っすか」と言った。
「あ、うん。一冊は今日の昼休みに返した。あのとき拭いてくれてありがとね」
「当然っす。図書委員の仕事っすよ」
 外見に似合わない言葉を放ち、彼は洸太のカードにもバーコードリーダーをかざし、ピッと音を立てた。
 洸太が初めて彼を見たのは、四月の図書室のカウンター内だった。本を借りようと思ってそこへ行くと、教師に貸し出しのやり方などのレクチャーを受けていたのだ。一六五センチの自分から見上げるほど背が高かったから、始めは三年生なのかと思った。頭髪に制限はない緩い校則だが、髪を染める生徒は少ない。
 彼は見た目の威圧感から目立っていて、洸太が最初に思ったのは「この人が当番のときには本を借りたくないな」というものだった。その後、彼が自教室の前を通るときに見た上履きの赤いラインが一年生だと主張していて、洸太は心の底から驚いた。
「つか、先輩の名字、めでたいっすね。寿って、ことぶきって読むんすか」
 彼は洸太のカードをじっと見てそう言った。名前についてはよく言われるので、自然と笑みが浮かぶ。
「そう。ちょっと珍しいよね」
「っすね。オレ、毒に島って書いてぶすじまって読むんす。なんか強そうっす」
「え、そうなんだ? インパクトが強い名字だね」
 洸太の返しに、彼はまばたきの少ない目でこちらを見下ろして言った。
「毒がぶすって読むからみんないじりたいんじゃないかと思うんすけど、いじられないっす。それってオレがブスだからっすかね?」
 ええ、答えにくいことを言うなあ。
 洸太の背中に汗がたらっと落ちた。
 金髪プリンは背が高いし、プリンなのはさておき髪を染めているからおしゃれに気を遣っているように見える。一見強面だと距離を置かれそうなタイプに思えるが、頬にかかる前髪から覗く二重の垂れ目はちょっと大きめで、わんこ系の童顔だった。
 だが、童顔でもじろりと見下ろしてくると圧がある。なにか言わねばと必死に知恵を絞り出す。
「ええっと、狂言って知ってる? 劇の一種なんだけど、その中に『附子(ぶす)』っていう話があってね。附子、つまり毒が出てくるんだけど、それは嘘で正体は砂糖だったっていう展開で」
「『さてもさてもうまいことぢゃ』」
 突然彼が附子のセリフを言って、顔をぱっと明るくさせた。
「知ってる! 見に行ったことある! 小さい頃に変な読み方する名字だなあって親に言ったら、こんなおもしろい話があるよって連れてかれたっす。あれ以来自分の名字が嫌いじゃなくなったっす!」
毒島(ぶすじま)君、寿(ことぶき)君」
 カウンターのうしろから司書教諭が顔を覗かせた。口に人差し指を当てて「シーッ」と注意してくる。思わず首を縮め、洸太は声の音量を絞った。
「え、えっと、そのう、僕が思うに毒の正体は貴重でいい砂糖だから、毒島君はいい人だよ!」
 本を拭いてくれたハンカチを思い出して洸太が言い切ると、彼は目を見開いてこちらを見下ろし、突然ふいと目をそらして口元に手をやった。
「先輩……破壊力が半端ないっす」
「え? 破壊力?」
 続きを聞きたかったが、再び司書教諭が口に指を当ててきたので、洸太も彼に人差し指で合図を送った。彼は口を真一文字に引き結び、カウンターから身を乗り出してきて口の横に片手を添えた。
「校門で待ってて」
 耳打ちされて、目を丸くする。
 え、金髪プリン君から呼び出し?
 洸太は驚いて動きを止めたが、そこへキーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。図書室閉館前の合図だ。洸太はこくんと頷いて廊下へ出た。第一体育館の舞台に集まる部員たちと終わりの挨拶をし、片づけをしたときには下校放送は終わっていた。真っ先に体育館を飛び出し、すのこをカタカタさせて靴に履き替えて校門へ急ぐ。
 ないと思うけど、僕、このあとどこかの裏路地につれてかれたりしないよな? そこで歯を食いしばれって言われて、デコピンされたりしないよな? いや、デコピンで済むなら別にいいんだけど。それより「遅えんだよ」って校門で怒鳴られたらどうしよう。
 梅雨晴れの夕方、昇降口から鉄筋コンクリート四階建ての校舎を飛び出して坂道を下る。すると、門に背もたれてポケットに両手を突っ込みながら空を見上げている金髪プリンが目に入った。慌てて彼のところまで全速力で走る。
「あの、遅くなって、ごめん!」
 はあはあと息を切らして彼の前で息をつくと、彼は無表情に「お疲れっす」と淡々と言った。
「待たせちゃったよね? ごめんね」
 怒ってないよな? 洸太が緊張しながら言うと、彼は軽く首を横に振った。
「待ってないっす。今来たばっかっす」
 彼はそう言い、「っていうセリフが正解っすよね」と付け加えた。金髪プリンの本音が読めない。やっぱり怖い。
 だが、予想に反して彼は「ちょっと先輩に相談があるんすよ」と言った。そして大きな手が「あっち行きましょ」と校門の斜め前の道を指す。
「あっちに公園があるって聞いたっす。今日は雨降ってないし、ベンチとか座れるんじゃないっすか」
 学校から徒歩三分の大きな公園は人が少なかった。時刻も遅く、子どもの声もない。我が石見(いわみ)高校カップル御用達の場所なのだが、雨が降っていないと言ってもどことなくじめじめしているし、夏が迫ってきていて暑い。みんなどこか涼しい場所で楽しんでいるのだろう。
 金髪プリンは公園の車止めを通り抜けると「あそこがいいっすね」と東屋を指した。
 三方を胸の高さまである壁に囲まれているそこでデコピンを食らうのだろうか。背筋を伸ばし、彼のあとについて行く。彼がどさっと座った横に一人分空けて洸太が腰を下ろすと、彼はこちらをじっと見てきた。
「てか、先輩暑くないっすか。なんで夏なのに紺のカーディガン?」
「僕、冷房の風が苦手で。下は半袖だよ」
 洸太はそう言い、話の主導権を握るために「相談ってなに?」と切り込んだ。
「あの、僕たちしゃべるのは今日で二回目だけど。そんな僕が相談に乗れることある?」
 すると彼は驚いた表情になった。
「もう結構しゃべってるっしょ? 先輩、オレがカウンターにいるときに何回か本を借りてるじゃないっすか」
 今度は洸太が驚く番だった。図書室に通うのが日課になっているが、彼の記憶に残るようなやり取りをしたことはない。それに、彼の当番がなんとなく把握できてからは洸太は怖そうな彼をなるべく避けてきたのだ。
「え、僕のこと覚えてたの?」
「あんなめでたい名字、忘れないっしょ。しかも、先輩、すげえ本借りてるでしょ。カードを読み込むと履歴が見えるんすけど、他の人と比べて圧倒的に多いんすよ。そりゃ覚えるっしょ」
「だとしても、本を貸してください程度の会話しかしてないけど」
「あの『附子』を知ってる先輩にだから話せる話なんすよ」
 彼はそう言うと深刻そうに深々と息をつき、膝に肘をついて前屈みに手を組んだところへ顎をのせた。真剣な様子はさながら犯人を当てる探偵の様子だ。
「実はオレ、さっき人生の目標ができて」
 重たい口調に金髪の小さなしっぽが揺れる。
「先輩が毒の、附子の正体は砂糖だったって言ったっしょ? あの話、小さい頃に見ただけだったからちゃんとした展開を覚えてなくて、先輩の言葉で思い出したんす」
 彼はそう言い、真剣な表情でこちらを見た。
「オレ、将来佐藤さんと結婚するっす。んで、名字を佐藤に変えるっす」
 金髪プリンの突然の決意表明に洸太の頭の中がはてなで埋め尽くされた。だが、彼は続ける。
「毒の正体は砂糖なんしょ? 名字が毒島から佐藤に変わったらすごくないっすか。オレ、将来佐藤さんと結婚して、佐藤さんになりたいっす。どう思いますか」
 じろりとこちらを見る金髪プリンの声には、先ほどよりも力がこもっていた。どうやら本気で言っているらしい。だが、言ってることがよく分からない。しかし洸太の本能が「彼に逆らうな」と命令してきた。身長差で圧がすごい。
「……え、えっと、うん、そうなったらすごいね……」
 曖昧に濁して頷く。すると彼は「やっぱりすごいっすよね!」と笑顔を咲かせた。
「オレ、まず同じ学年の佐藤さんを探します。オレ、普通科で六クラスもあるんで人数はいっぱいっす。絶対見つけるっす」
「普通科なんだ。うち、いろいろあるから、どこなのかなって思った」
 共通の話題を見つけた洸太がそう言うと、彼はリラックスしたように髪ゴムからこぼれた髪を耳にかけた。
「先輩はどこっすか」
「僕は特進科。昨日昼休みに廊下で会ったでしょ。あそこ、二年の特進クラスの前だよ」
「マジっすか。特進って入るのも勉強し続けるのもすげえ大変なんしょ。有名大学まっしぐらコースっすよね」
「たまたま入れただけだよ。勉強は投げ出したくなるときもあるけど」
「そすか」
 彼はそこで言葉を区切り、ぐっと右のこぶしを握った。
「先輩の教室も分かったことだし、オレ、佐藤さんを見つけたら先輩に真っ先に報告するっす。結婚を前提にお付き合いしてみせるっす」
 彼はそこで立ち上がると、こちらに深々と頭を下げた。
「先輩のおかげで将来の夢ができました! あざっした!」
 金髪プリンはそれだけ言うと、「じゃ、失礼します!」と大きい声で言って洸太を置き去りにして公園を出ていった。洸太は彼の消えた出口にある銀色の車止めを見て目をぱちぱちさせた。まるで通り過ぎる嵐に巻き込まれたようで、事態を飲み込めないまま終わってしまった。とりあえずデコピンされなくてよかった。
 洸太は「佐藤さんになりたい」と真剣に言った彼の口調を反芻し、思わずぷっと吹き出した。
 独特な子だな。ヤンキーっぽいのかと思ってたけど、友達が言ってたように天然っぽい子みたいだ。
 そこへ鞄の中のスマホが鳴る。出してみれば「どこにいんの?」とメッセージが来ている。洸太は着たままだったカーディガンを脱いでたたみ、鞄を肩にかけて立ち上がった。
『学校の近く。すぐ帰る』
『夕飯ハンバーグ。家までダッシュ』
 ハンバーグの文字を見た途端お腹がきゅるると音を立て、洸太は地面を蹴って駆け出した。だが、徒歩二十分の距離を走って帰ったのに、「ただいま」と玄関から家にあがるなり、リビングから「遅え!」とTシャツにハーフパンツ姿の湊太(そうた)がむくれた顔を覗かせた。我らが演劇部の主役も家に帰ってくればただの空腹の高校生だ。
「コータ、先に学校を出たくせになにやってんだよ! 俺は腹ぺこなんだよ!」
「ごめんって。ダッシュして帰ってきたんだから文句言わないでよ」
「コータが帰ってこないと夕飯食べられねえだろ!」
 そこへ台所から母の声が飛んできた。
「同じ高校で同じ部活、それなのになんで同じ時間に帰ってこないの。温かいご飯を出すのは大変なのよ」
「コータ早く着替えろ! ちゃんと手を洗えよ!」
 母親のようなことを言う弟のセリフに小さく笑い、洸太は自室に向かった。