「あー、うめぇ」

 一気にあおって、玲望は息をついた。

 駐車場まで戻ってきて、自販機で飲み物を買った。

「なんにする?」と聞いたのだけど、玲望は「炭酸」と答えた。

 炭酸にも色々あるのだけど、玲望がさっさと金を入れて、ボタンを押したのはレモンサイダーだった。

 がこんっと出てきたそれ。

 瑞希は数秒、見つめてしまった。

 出てきたペットボトルを玲望が持ち上げ、「つめてー」と楽しそうに頬に当てるのを。

 初夏の冷たいレモネード。

 真冬の優しい温度のホットレモン。

 ほかにアイスなんかもあった気がする。

 玲望は思い出してくれたのかもしれない。

 二人のここまで一緒に歩んできた時間を。

 日々を。

 今、飲むのにふさわしい、なんて思ってしまって、瑞希もつい同じものを買っていた。

「うめぇな。酸っぱいけど」

 瑞希も一気にあおる。

 喉はからからだったのだ。

 レモンサイダーは口の中でぱちぱち弾け、体を心地良く冷やしてくれた。

「レモンには疲労回復効果があるんだぜ」

 ちゃぷんとペットボトルを振って、玲望は言った。

「だいぶ疲れたからなー。瑞樹のせいで」

 ここまで何度も言われた言葉だったけれど、今のものは、一番嬉しそうだと瑞希は感じてしまった。